1章 28話「寝不足」
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「ゼオ、顔色悪いよ?」
「……ちょっと寝不足で」
翌朝、いつも通り自分の席に座って隣にいるグリーゼオに挨拶をしようとしたノアールだったが、目の下にあるクマに驚いてしまった。
珍しく掃除をしたおかげか良い具合に疲れて熟睡をしたノアールに対し、グリーゼオは父の部屋でずっと辞書を片手に様々な文献を読んでいたせいで、あまり寝ていない。気付いたら寝落ちしていたので、睡眠時間は一時間あったかどうかだ。
「お前は、大丈夫か?」
「私は平気だよ。ゼオのおかげで部屋も綺麗になって、昨日はぐっすり寝れた」
「そうか。なるべくあの状態を維持できるようにしろよ」
「ぜ、善処します」
「つか、部屋に溜めこむんじゃなくて毎回書斎で読めばいいんじゃねーの?」
「いや、私も最初はそうしてたんだけど……寝る前とかに読んだりするのに部屋に持っていくようになってから……あんな感じになって……ミリエリに怒られたから、もう夜更かしはしないようにしてるんだけど」
「なるほどな。じゃあ今度からまた書斎でだけ読むようにしたらどうだ」
「ええーベッドでゴロゴロしながら読むの楽なんだもん」
ノアールは机に突っ伏して唇を尖らせた。これも行儀が悪いとミリエリだけでなく母にも注意されたが、楽な体制で読むのが好きでやめられないでいる。
一度だけそのまま寝落ちして本に涎を垂らしてしまったことがあり、今も机の引き出しの中に隠していて誰にも言わず内緒にしている。
「うつ伏せで読んでんの?」
「そうだよ」
「腰痛くならん?」
「んー、まぁ少しだけ?」
「おれは体痛くなるから出来ないな。ソファとか壁に寄り掛かって読むほうが楽」
「それだとお尻痛くならない?」
「……なるほど。お前はそっち派なのか」
「うん。長時間座ってると痛くなって集中できない」
クッションなどを使って緩和させるが、それでも体の痛みが気になって集中力が途切れてしまうことがある。ノアールには知られていないことだが、姿勢や椅子などの環境を良くすれば改善されるが、カイラスがあえてそれをさせないでいた。あまり環境を良くし過ぎるとノアールがずっと調べ物をし続けて止めないからである。
「そういえば……お前、この前おれんちに来たときさ、なんか気になる本とかそういうのあったりした?」
「気になるもの?」
「ああ。おれも家にあるもの調べてみようと思ったんだけどさ、なに書いてあるのか分からないものが多いから時間かかっちゃって……なんか古い魔法のこととか、そういうの書かれているものに絞って調べれば効率良いかなって」
「……もしかして、私のため?」
「父さんが帰ってくるの待ってたら、いつになるか分からないし、ちょっとでも手がかり見つけたいしさ」
「ゼオ……」
寝不足になった原因が自分のために調べ物をしていたからだったことに申し訳なさを感じつつも、嬉しくなった。何より、それを秘密にするのではなく、自分一人で背負おうとせずにこうして自分にも相談してくれたことがありがたい。
「じゃあ、またゼオの家に行きたいな」
「いいよ。ちゃんと家の人に許可貰ってからな」
「うん!」
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