異世界航空ベグラント便

蓬竜眼

機内案内 前編

 ようこそ!リアルアフターライフ号へ。


 驚いたかな?当機は乗り降りの為に着陸する必要が無いんだ。

 まるでUFOにでも攫われたかのようだろう?


 安心してほしい、君は客人だ。ヘンテコな実験に付き合わせようなんて思っちゃいない。案内するよ。


 チケットに書いてある通り、君はいつでも帰れる。この瞬間のうちにでも、だ。


 私が君のサポートを担当する。リーダーとでも呼んでくれたまえ。仲間からもそう呼ばれてる。


 ところで、航空機に乗るのは初めてかい?…そうかそうか。

 当機はただの飛行機ではないことは既にお分かりだね?航空機の経験があろうとなかろうと、ユニークな体験を期待しておいてくれ。

 無論、どんな世界に行こうと機内の安全は保証しよう。


 …さて、ここが君の部屋だ。完全な個室は、ファーストクラスでさえも中々お目にかかれないだろう?

 テーブルにライト、モニターにステレオスピーカーだってある。窓側にあるソファーはベッドも兼ねているから、いつでも休めるぞ。


 あーただ、トイレとシャワールームは共用なんだ。場所は備え付けのガイドを見てくれ。大体の場所さえ把握すれば、あとは見た目でわかると思う。

 まあ共用とは言っても、今は客人である君を除いて3人しか乗ってないからなぁ。待たされることはそうそう無いと思ってくれ。


 では、チュートリアルに入ろう。そこにある端末から、ライトやモニターの操作にサービスの注文なんかが可能だ。試しにタブレットからウェルカムドリンクを選んでみてくれ。もちろん、無料で飲み放題だ。


 …グッド。

 これができれば、機内のことで困ることはないだろう。スタッフの呼び出しもできるからね。後になって気になることがあれば、タブレットから呼び出してくれ。

 客人は今のところ君だけだ。遠慮することはない。まーでも、用事があってすぐには対応できないこともある。その時は私以外を…。


 失礼します。ドリンクをお持ち致しました。

 …どうぞ、ごゆっくりお寛ぎください。


 …彼女が私の代理の時もあるだろう。あのエルフはキャプテンと呼んでくれ。当機のCAなんだが、機長でもある。


 機長がCAをやるのかって?自動操縦が優秀だから、操縦に手間がかからないんだ。障害物も自動で避けるからね。なんなら、人力では障害物を避けきれない場合があるんだ。


 …心配することはないさ。いざというときは君を自宅に飛ばす。君の自宅の位置はマークしてあるから、どこからでも送れるようになっているんだ。


 逆に言えば、現地の安全性を考えなければすぐにでも異世界旅行を楽しめるようにはなっている。

 だが、我々は効率や時短なんかを重視している訳じゃない。行き当たりばったりの旅をのんびり楽しんでもらいたい。


 そういうわけで、しばらくは機内に慣れることも兼ねてゆっくり寛いでくれたまえ。機内を散策してもらっても構わない。立ち入り禁止の場所は、入れないようになっているからね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る