獣人少女は大好きな恋人から逃げ出したい!!

宮野 智羽

プロローグ

昔、それはもう幸せな恋愛をした。

きっとあれ以上の恋愛はできないと思うし、恥ずかしながら運命というものを信じてしまうほど満たされていた時期があった。


そんな幸せが終わりを迎えたきっかけは国からの1つの伝令だった。


『今後全ての獣人は奴隷の対象する』


その伝令は私たち獣人の生活を大きく変えた。

人間から逃げ惑うも、中には捕まって売られる獣人もいた。

売られた先のことなんて考えたくもない。



そんな中、自分たちの命を守るため、隠れている獣人たちで協力して森の奥深くに逃げる計画が立てられた。


決行の夜。

寝静まった街を静かに駆ける私の耳に届いたのは


「ベルナ!」


愛してやまない彼の声だった。


仲間の邪魔にならないように縁に寄ってから振り返ると息を切らした彼がそこにいた。

国の伝令以降、初めて顔を合わせた夜だった。


泣きそうな表情。

伸ばされる手。


きっと彼なら獣人である私を助けてくれるかも。

そう思うも、彼のことを信じ切れなかった。


「ごめんなさい。ありがとう」


__さようなら


何度も私の名前を呼ぶ声を背に、涙を拭いながら森の奥深くに身を隠した。





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