2×3=6(ロック)なモノノケ退治!!

蝶夏

プロローグ

 私は、清水未申しみずみみ十歳。東京に住んでたけど、親の仕事の都合で、今年——小学五年生の春から藍苺らんめい町に引っ越すことになったんだ。

 前の学校ではちょーっと色々あってちょーっと浮いてたけど……引っ越し先の学校、北東小学校ではきっと上手くやれる! だいじょーぶ、スマホで調べてみたらこの町って結構治安いいみたいだし、住んでる人も親切って書いてあったし!

 当たり障りない自己紹介をして、変な行動をしなければきっと普通に充実したスクールライフが送れるはず!!


 ええ。

 はい、そうですよ。



 はいはい。いい加減、現実を見ますってば!



   タッタッタ。

 静かな住宅街の路地にカチャカチャと、ランドセルの金具の音が響く。

 走りながら、私はちらっと振り返った。背後には不気味な黒い影。すごいスピードで私を追いかけてきている。

まだついてきてる……!

『ウマソウナニンゲン……!』

「ひぃっ!」

 叫びそうになって、思わず口を塞ぐ。危ない危ない。

 『叫ぶ→大人が来る→大人にはこいつらが見えない→私が怒られる』のパターンはもうこりごりだ。

 路地をくねくねと曲がって後ろのやつを巻こうとしたけれど、来たばかりで道が分からない。そろそろ迷子になりそうだ。


 もうこうなったらアレしかない、か。


 私は立ち止まって後ろを向いた。

「ふぅー……」

 息を吐いて気合いを入れる。

「ていやぁっ!!」

右脚を後ろに下げて、腰をひねる。

食らえ! 全体重と全腕力を込めた全力の、必殺☆どうにでもなれという想いを込めたよく分かんない奴らにすごくよく効くなんかすごいパンチ!

 略して!


 必殺パンチ!!


『グアァッ!』

 私の必殺パンチを受けて黒い影はよろめいて、消えていった。

「ふう……」

 額の汗を拭う。ただでさえ荷物が重いのに全速力で走ってパンチまでしたのだ。超疲れた。

「まさか、転校初日にカイブツに遭うなんて。私の運悪すぎない?」


 昔から、私は人には見えない物が見えた。妖怪なのか幽霊なのか分かんないけど、そいつらは大体私を襲おうとする。

 神社に逃げ込んだり、人の多いところに逃げたりすれば追ってこなくなるけど……いつもそれができるわけじゃない。

 昔本当に追い詰められた事があって、怖すぎて抵抗したら普通に物理攻撃が効くと分かった。

 というわけで、それ以降どうしようもなさそうなときは殴って解決している。

「なるべく関わりたくない。関わってもいいことないし。出にくい道とかあるかなぁ……?」

 そう呟いた瞬間、遠くでチャイムの鳴る音がした。

「ヤバい! 遅刻!」

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