第一章②
一
女王イデアの統治する北の大国、『ユラン=ブルク
この国の首都、セントグラードの中心に、
灰色の雲が日の光を
「オドを集中します!」
少年が魔導書に手をかざし、「
「また、失敗してしまいました……難しいです」
少年、ソーン=ユーリエフはがっかりした表情でため息を
その様子を
「我が
兄が聞けば
「お師匠様、どうしたら
ソーンは困ったように首を
かといって、
「それには、コツがあってな。
「感覚ですか?」
「
「お師匠様は、僕くらいの
隣を歩きながら尋ねると、アカンティラドが
「わしはヨチヨチ歩きの
「そんなに小さい頃から? すごいです!」
尊敬の
「兄様も今の僕より小さい頃から魔術が使えていたのに。僕はどうして、少しも上達しないのでしょう?」
兄のアダム=ユーリエフは、女王陛下の
兄が勤務しているあいだ、ソーンはこの庭園や図書室で、魔術の勉強をしていた。王宮の魔術師団に属する魔術師であり、黒滅導師の異名を持つアカンティラドを師匠につけてくれたのは女王イデアだ。ソーンが持っているこの魔導書『チェーニ』も、アカンティラドがくれたものである。
「無意識に
庭園の中を歩きながら、師匠は
「
ソーンは「はいっ」と、真剣な顔で頷いた。
アカンティラドは、まとわりついてくる
「それも、仕方ないことではあるがな……お前さんは
言葉を
この王宮で長く暮らしているけれど、ソーンが知らない場所も多い。王宮の庭園は広く、湖や森が広がっている場所もある。このリンゴの木は
「この木は枯れてしまったんでしょうか?」
「さぁて。ただ……よい感じに魔物が入り込んでいるようだ」
アカンティラドはペロッと舌なめずりすると、
「お師匠様、それはなにかを呼び出す魔法陣でしょうか?」
「ちょっとばかり違うな。まあ、見ておれ」
アカンティラドがトントンと杖で地面を
「おっ、お師匠様。これはいったいなんですかっ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます