『アイリの卒業と、ディアの求婚』(3)

そして次の日。ついに迎えた、魔界の学校『オラン学園』の卒業式。


季節は春。アイリは無事に、魔界の高校を卒業した。

とは言っても、アイリの見た目は入学時と変わらない。

混血とはいえ、数万年も生きる、寿命の長い悪魔の血筋。

人間と違って、見た目と実年齢は一致しない。


卒業式を終えた後、アイリは昇降口を出て、校庭の真ん中に立つ。


「わぁ……桜吹雪……」


栗色のボブヘアを春の風に靡かせながら、アイリは両手を広げて空を仰いだ。

濃紺のブレザー、胸元に赤いリボン、同色のスカート。

制服姿でここに立つのも、今日で最後だ。

広い校庭の真ん中ではあるが、風に乗った花びらが、ピンク色の雪となって降り注ぐ。

そんなアイリのすぐ隣で、優しい笑顔で彼女を見守るディア。


「アイリ様。ご卒業、おめでとうございます」


ディアの自主的な恋愛の封印が解ける今日、この日に。


「アイリ様がご卒業を迎えられた今日、お伝えしたい事があります」


今までの想い、これからの想い。全ての愛を伝えるために。

スーツの内ポケットに忍ばせた『婚約ペンダント』を捧げると共に。



「これからは、未来の伴侶としてお守りすることをお誓い致します」



愛されるという事が、こんなにも幸せなのだと気付かせて下さった貴方に。

たくさんの愛を下さった貴方に、一生をかけて愛をお返し致します。





生徒と教師の関係、そして恋愛の封印から卒業した、この日から。

『悪魔の王女と、魔獣の側近』の物語が始まる。



—完—

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