第7話『アイリの卒業と、ディアの求婚』

『アイリの卒業と、ディアの求婚』(1)

後日、ディアは城を出て城下町に来ていた。

アイリの付き添いでの外出はよくあるが、ディアが一人で外出する事は珍しい。

黒のスプリングコートを羽織り、帽子を深く被っている。

魔王の側近として顔を知られているディアは、なるべく目立たない服装で出かけた。

今日はディアにとって、重要な目的があったからだ。


商店街の一角に構える魔道具屋に辿り着くと、そこで足を止める。

深呼吸のように大きくフゥっと息を吐くと、店の入り口のドアを開ける。


「いらっしゃいませ〜!あ、ディア先生!?」


ディアを出迎えた店員は、エプロン姿のリィフ。

この魔道具屋はリィフの実家であり、たまに手伝いでリィフが店番をしている。


「わぁ!ディア先生のご来店、めっちゃ嬉しい!ファンクラブ会長として光栄ですぅ!」

「今日はリィフさんが店番なんですね。よろしくお願いします」

「はい!今日は何をお探しですか!?」

「魔石を見せて頂いてもよろしいでしょうか」


ディアは店に並ぶ魔石の原石を1つ1つ手に取って丁寧に見ていく。

研磨されていない原石に輝きはなく、色の違いくらいしか差はないが、それでもディアは真剣に見比べている。

仮にも魔道具屋の店員であるリィフは、魔石を選ぶディアの様子を見て勘付いた。

……が、あえて、それを言わない。

ディアがようやく赤い魔石に決めて手に持つと、リィフの所へと持ってきた。


「この魔石をアクセサリーに加工して頂きたいのですが」

「はい!ご注文承ります!」


ここまでくれば、もう確定だ。

ディアが注文の手続きと会計を済ませると、リィフがニコニコしてディアに伝える。


「赤い宝石、きっと似合いますよ!成功するとええですね!」

「……はい、ありがとうございます」


少しだけ頬を赤くしたディアは、照れを隠すように帽子を深く被った。

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