第13話 遊園地デート開始

 私は民代さんにインターネットで買ってもらったお洋服を着込んだ。民代さんは


「苦しくないですか?本当はショッピングモールとかで試着して、サイズ合わせしなければと思ったのですが…。でも流石…!よくお似合いですよ」

 と姿見…。現代では鏡の中を見る私。


 薄めの白いカーデガンに首元は可愛い白レースのついた襟と、薄いグレーのストライプラインの入ったワンピースに、黒いミニショルダーバッグに頭には少しサイドを編み込んで後ろにリボンを付けている。靴も可愛らしい薄めのグレーの女子のスニーカーだ。遊園地は広いから歩き疲れるだろうと予想してくれた民代さんが用意してくれた。


 それからお化粧をしてもらいリップは薄い色付きのモノで塗るとツヤツヤしていた。お化粧なんてした事のない私は手軽さにおったまげた。


「食事やキスで剥げたりするので化粧室…遊園地内のトイレの場所を最初に渡される地図で確認しておきましょうね?解らなかったら優平様にお聞きしてもらうか、いっそ塗ってもらいなさい」

 と言う。


「ありがとう民代さん…!わ、私…この時代の女の子に見えます?」


「は?当たり前ですよ!!こんな可愛らしいお嬢さんなら私も娘が欲しいです!


 私は子供に恵まれない身体なので…鈴様…、お母さんと呼んでいいのですよ?……とまあ、冗談ですが。


 さあさあ!優平様が玄関でお待ちですよ!」

 と連れられ玄関に行くとカッコいい優平くんが待っていた。


 白のTシャツを中に着込み、上に薄い明るい色の茶系の上着を着て、ズボンは紺でチェックが入ってるモノで黒いリュックを下げている。

 綺麗な顔に爽やかさがプラスされ、旦那様素敵です!


 と思っていたら口をあんぐり開けて顔を赤くしてボトリとリュックが下に落ちて優平くんは私を見て固まった。


「あらあら優平様また固まっちゃいましたね…。鈴様があまりにも可愛いので。


 優平様!しっかり鈴様をリードしないと横からチャラチャラした男に連れ去られるかもしれませんよ!?」

 と民代さんが言うとハッとして…


「わわわ…判ってるよ!!す、鈴さん凄く似合ってるし綺麗だ…」

 もはやぽやんとしてしまう優平くんをしっかりしてくださいと揺らしてまたハッとする優平くん。


「うっ!ダメだ!慣れないと!!…あっそうだ、鈴さんこれ…」

 と指輪をポケットから二つ出して一つを自分の指に嵌めてもう一つを私に渡す。


「ちょっとした魔除けみたいなものだよ。外で鬼に狙われないように術をかけておいた。それと興奮しても角が出ないようにしてるんだ。


 だから絶対外さないで!これをつけていると夕方までは普通の鬼は出ないけど、陽が沈むと鬼達は勘付いて鬼門が現れやすい。万が一の為にね。


 悪いけど夕方までにはこの屋敷に帰ってこよう!いいね?」

 と優平くんは真剣に言う。私も鬼だから闘えるかもしれないけど、


「そんなに甘くないし、まだ訓練もしていないうちに鈴さんと鬼を会わせたくないし危険だ。それにその服を汚せない!」

 と言われて私の手を取り指輪を嵌めようとするが民代さんが止める。


「優平様?薬指ですよ!お嫁さんなんですから!多少の男避けにもなりますし」


「薬指?あ、ドラマで恋人に贈る時出てきたやつですね!?」

 どうやら薬指に指輪を嵌めると婚約とかお嫁さんの印らしい。優平くんは赤くなり、解ってるとばかりに民代さんを睨み薬指に嵌めてくれるから嬉しい!!


「じゃあ…行こうか…。あまり離れないでね?」

 と手を差し出され握るとあったかい。

 優平くんも照れながら進む。ようやく結界から出て外の世界へ出る私。ドラマで外のこととか見ていたから何となくは判るけどそれでも初めて家の外に出て感動した!!


「電信柱!!塀!!犬!!」

 と私は発見しながら優平くんと歩き、優平くんもその様子を見て優しく笑う。

 綺麗に舗装された道…。平安時代はもっと臭い匂いがしたけど空気綺麗。

 それに緑は激減したけどたまに通る家に植えられた植物やお花もとても綺麗にしている。


 前からベビーカーに赤ちゃんを連れた奥さんが歩いて来たのが見えて私は近寄った!


「可愛い!赤ちゃん!!」


「あら、どうもありがとう」

 と奥さんはにこりと笑い、手を振り去る。


「鈴さん、他の人に急に声かけちゃあんまりダメだよ?知らない人なんだからね?」

 と優平くんは心配するけど赤ちゃんは可愛い。


「だって可愛いかったもの…。ドラマでもよくありました」

 と膨れると…


「可愛いもの見て、知らない人が声かけてくるのは相手も驚くよ…。あの人はたまたま心が広かったから良かったけどそうじゃない場合もあるよ。


 人攫いかと思って警察呼びますよ!とか叫ばれたら敵わない。いい?外の世界は僕以外知らない人なんだよ?もっと気をつけて…。ぼぼ、僕しか見なくていい!」

 とまで言ってキュッと握った手を強くして私はときめいた。

 優平くんは私を守ろうとしてくれてる。


「ありがとう優平くん…!嬉しい。世間知らずでごめんなさい。気をつけます」

 と笑うと


「……くっ…反則…」

 と照れた。


 それから私は初めてバスに乗った。優平くんは私を通路と反対側の窓側の席に座らせる。わぁ!ドラマで見たやつ!休みだから車内も空いている。混んでるとよく痴漢とか出るんだよね?とドラマで見たことを言うと


「まあ…出るかもね…はぁ…」

 と何故か気苦労する優平くん。

 手はまだ繋いだまま。時々指を絡めたり直したりするたびにドキドキする。優平くんと繋がっている感じがして嬉しい。優平くんも赤くなったりしながらも離さない。


 駅というところに着いた。これから電車に乗るみたい。


「これが駅…これが…」

 私はドキドキしながら駅に入りキョロキョロしてしまう。たくさん人がいる。切符売り場で切符を買うのかな?と思っていると優平くんはカードみたいなのを出した。


「スイカだよ…。切符と同じようなものだけど切符より早いからね。鈴さんのも買っておいたよ」

 と渡してこうするんだよと先にぴっと改札をくぐる。そしておいでと手招きされ私は震えながらスイカとやらを優平くんがしてたみたいにぴっとして潜った!


「わっ!出来た!やった!!改札できた!!」

 と喜ぶとジロジロ人に見られて


「しっ!静かに鈴さん!大人しくね?」

 とそのまま階段を降りて電車が来るのを待った。人が多く、電車内も混んでる。これはまたドラマで見たように痴漢が現れるだろうかと思ったが優平くんはドアが開いた瞬間真っ先にに私の手を引いてバババっと素早く座席を確保した!!私の隣にはお婆さんが座っている。


「ふー!席取り成功!」


「痴漢されるかと思ったのに」

 と言うと優平くんは呆れて


「されたいの?ドラマじゃないけどさせないよ!」

 とちょっと怒ったけど


「優平くんになら痴漢されてもいいですよ」

 と言うと彼は真っ赤になり


「ばっ、バカじゃないの!?ししししないよ!!」

 と俯く。うふふ。照れてる。だんだん優平くんのことが判ってきて嬉しい。こんな風に言うと照れて俯いてしまうのは癖なのかな?


 ようやく降りる駅に到着して優平くんはまたさっと手を引き降りた。素早い行動に関心する。


 降りた駅が遊園地の目の前で驚く。


「あれが遊園地…」

 ドラマで見たけど一部で、中に入るとこんなに広いとは思わない。


「流石に絶叫系は鈴さんビックリしちゃうかな?辞めとく?」

 とドラマでみたような定番のジェットコースターなどを指差す。とんでもない速さで走っている!

 でも…何事も経験だと思い、私は


「乗ります!!」

 と宣言すると何故か青くなる優平くん…。


「えっ!?の…乗るの?最初に!?絶対断ると思ったのに…」


「だって…あれ乗らないと遊園地じゃない!!後でお化け屋敷も行きたいです!!」


「ひえっ!!」

 と優平くんは更に青くなり、あれ?もしかして優平くん怖いの苦手なのかな?…でも鬼退治とかしてる人が…まさかね。


 しかし直ぐに判った。

 ジェットコースターで優平くんは思い切り叫んだ。綺麗な顔とか気にせず。


「ぎゃーーーー!!ひいーーーーっ!も、もうやだ!!」

 と泣き叫び、

 お化け屋敷に入ると


「ぎゃっ!がっ!ががが!骸骨!!」

 と私に飛び付く。


 数時間後にはベンチでぐったりしている優平くん。流石に大丈夫かなと背中をさすったりする。


「あ…ごめん…かっこ悪くてむむ、昔から苦手で…絶叫系。き、嫌いになった?弱虫で…」

 と言うから首を振った。正直私は楽しかったけど。


「優平くんを嫌いになんてならないです。今日も楽しみだったし、遊園地は楽しみだけど優平くんといるから楽しいんです!」

 と言うとちょっと顔色が戻ってきた。


「す、鈴さんは…優しいね…」


「優しいのは優平くんです…優平くん…私、漢字の練習で最初に優平くんの漢字の文字覚えたんです。


 優しいって意味の文字なんですね。優平くんにピッタリで好きです」

 と言うから優平くんはみるみるトマトみたいに真っ赤になる。


「鈴さん…。そんな褒めないでよ…。大したことないよ、僕なんて…」


「??優平くんカッコいいのに…。ほら、ドラマでよく言ういけ…イケメンです!!」


「ええっ!?」

 と俯く。やはり照れてる。


 それから今度はメリーゴーランドやコーヒーカップに乗ってみる。これなら怖くないから優平くんも平気だった。なにやら着ぐるみマスコットと写真撮ったりした。


 うーん!デート楽しい!!ドラマでは1人になると女の子に声をかけてくる、民代さん曰くチャラ男たちがよく出没するもんだけど優平くんは絶対1人にしないし、


「チャラ男に声なんてかけさせない!」

 とまで言った。何か燃えている。

 常に手は握ったり、たまにチャラ男みたいな人が視界に入ると顔を赤くしながら優平くんは私の肩を抱いて通り過ぎて行く。

 たまに後ろから


「チッ」

 と舌打ちが聞こえる。ほんとに女の子を漁りに来ているチャラ男いるんだなぁと思った。


 お昼はなんとパスタというお洒落なやつだった。凄い!ドラマで見たやつだ!優平くんのうちは和食がメインだから洋食に憧れていた。


「ああ、言ってくれればこれから洋食もだすよ。ごめんね」

 と逆に謝られた。


「ううん、テレビで見てて言いそびれただけで…」

 と私は恥かしくなる。おねだりし過ぎで悪い女すぎるわ!!


「あ、あのね?優平くん!私もっと頑張って勉強して優平くんと学校行きたいし、ドラマとかでよく見るバイトもしてお金を貯めて恩返ししたいです!!」

 とバイトでお金を貯めるを覚えた私は言った。だが優平くんは首を振った。


「それは許可できない…。お金のことは心配しなくていいよ。言ったでしょ?夜になると鬼が出るって。


 バイトなんてしたら帰りは夜だよ?だから僕もしていないし、夜は僕は鬼退治をする…」


「あっ、そっか…」

 としゅんとする。バイトをする夢は無くなった。


「……昼間なら…。ほら僕と一緒に夏休みとか昼間だけバイトすればいいよ。鈴さん1人じゃ大変だし!」


「私…1人じゃダメなんですか?」


「ダメだよ!絶対!鬼でなくてもバイトの男に食われる!!」


「ええ?何それ?」

 と言うとため息をついて


「鈴さん…。自分が可愛くて綺麗な女性という事自覚した方がいいよ?」

 と言われた。優平くんも綺麗なのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る