第一惑星交響曲
天錺パルナ
第一惑星の巨人、はじまりの詩
はじめて、詩を書こうとおもう。
きっときみは知らないだろうけど、ちょっとむかしまでは、みんな書いていた。そして見せ合いっこしていたの。
どうやって生きていけばいいのか、そのヒントをつかむために。生きてきたことを世の中にのこすために。
みんな「あの戦争」のあと、しんだような顔をしていた。きょうを生きることにせいいっぱいで、光のない未来に、とほうにくれていたの。
きみは、おぼえてないよね。
・・うん、やっぱり。ああ、気にしないで。
まだ小さかったから、しかたないよ。
そうね。あれは数百年まえ、となりの地球へあそびに行ったとき、どこかの国で聖書をもったひとの銅像があったけど。ちょうど、あれくらいの背丈だったころかな。
え、「いいなあ、ぼくも見たかった」って?
あはは。きみもいたよ、やさしい彗星にはこんでもらったじゃない、エウロパって名前の彗星に。
きみはたしか、本を読んでいた。なんだっけ・・『火星年代記』みたいなタイトルの本。
彗星の青白い霧みたいな衣がひんやりきもちよくて、きみはおねしょを・・うふふ、ごめんなさい。もういわないから、こっちにもどってきて。ね?
・・そう、あのとき深海温泉にも行ったな。
あ、わかる? そうそう、夜の広葉樹みたいなサンゴ礁のすきまから、ぽこぽこぽこぽこ泡があふれて。まわりにいたエビさんたちはくるくる弾きとばされちゃって。
あそこから、すべてのいのちは生まれたのよ。
いまから数十億年まえに、あたしたちのご先祖さまが隕石になって落ちたときも、あの場所に着いたんだって。そうして、そのまま地球に住みつづけた・・。
そうだ! これを書けばいいのねっ?
いいこと思いついちゃったな。それと、あたしが詩を書くことは秘密でおねがい。まだあなたにしか話してないから。
おねえちゃんとの約束ーー
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