第31話 怪盗スケベ
夜な夜な、世の男たちが大事に所持しているアダルトDVDを盗み仰せるという愉快的犯罪をおこなってきた怪盗スケベは、ネット時代到来により、自身の存在意義を失いつつある。
今や物理的に成人向けソフトを持つ男はすっかり少数派。怪盗スケベは一時的に鬱状態に陥り、怪盗業の引退をも考えた。しかし思い直した。時代が変わったのならば自分も変わらねば。
ハッカーになって、世のエロサイトにあまねくコンピュータウイルスをまき散らそうか? という思案。しかし、我ながら良い考えと思ったのは一瞬のことで、怪盗スケベは80歳を超えており、デジタルに関しては完全にからっきしだった。仮に彼が逮捕されたら、80歳の男が怪盗スケベという時点でどうなのよ? という世間からの総ツッコミが入ることは必至だろうが……。
人類はスケベでないと繁栄しない。滅びる。スケベに関する諸々は滅びないはずだが、怪盗スケベは滅びそうだ。時代のせいなのか、年齢のせいなのか、なんだか分からなくなってしまったので怪盗スケベは今夜もダラダラと酒を飲んで一人くだを巻く。時代も年齢も恐ろしや。
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