第27話 孫悟空によろしく

「つかもうぜ! DRAGON BALL!」などと悠長なことを言ってる時代ではない、社会ではない。

 男には一歩でも外に出たら七人の敵がいるらしい。しかし現実的には七人どころか、自分以外の他人はみんな敵ともいえよう。

「つかもうぜ! GOLDEN BALL!」が合言葉の世相となった。敵の睾丸をつかんで潰し、敵の存在さえも潰さねばならない。

 厭な時代とは思うが、俺は今日も今日とて三人のGOLDEN BALLをつかんで潰して無事に帰宅した。考えようによっては毎日が摩訶不思議な大冒険。今こそアドベンチャー! だ。

 この世界のどこかにいるというラスボスの睾丸をつかんで潰せば、何でも願いが叶うといった謂われがある。きっとこの世のどこかで光ってると思う。探そうぜ! GOLDEN BALL! どんな敵でも構いやしない。この世はでっかい宝島なんだ。焼き肉食い放題みたいな?

 そんな風に、とりあえず余裕をかましていた。チャラ・ヘッチャラと生きていた。するといきなり俺の命運は尽きた。住宅街を油断して歩いていた俺の背後から、頭カラッポのような若い兄ちゃんがガッシと俺の睾丸をつかんできた。俺は悶絶しつつ抵抗するも、あえなくGOLDEN BALLを潰されてしまった。

 俺の大冒険、というか人生、ここに潰れけり。

 この後まだまだ続く……わけがないぞよ。

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