第15話 お天気おじさん

「台風は強い勢力を保ったまま、日本列島近辺に近づきます」

 気象予報士の中年男がモニターに映る天気図を示しながら、カメラに向かって解説した。 「皆さん、台風による災害にはくれぐれもご注意ください」と、視聴者に向けて語りかけた。


 テレビ情報番組内の気象情報コーナーでの出番を終えた、気象予報士の中年男は、コマーシャルに入ると傍らにいた女性アナウンサーに向かってボソリと告げた。

「ワタクシは、強い精力を保ったまま、今夜あなた近辺に近づきます」


 一瞬きょとんとした表情をした女性アナウンサーは、事態をのみこむと、顔から色を失った。

「いやだ……! 本格的に厭だ……!」

 女性アナウンサーを舐め回すような目つきの中年気象予報士。

 嫌悪・恐怖に駆られた女性アナウンサーが、気象予報士に対して(きっしょ~!)と感じて災いを避けるために注意をし始めたのは当然の流れだ。


 本当の災いは身近なところにある。身近なあちこちに。

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