第4話 とりあえず

 京子は大学卒業後、とりあえず当たり障りのない地元の食品会社に就職した。

 たまに同僚たちが集まる飲み会に参加してダラダラ酔っ払う夜を過ごしもした。

 

 居酒屋でいつも「とりあえずビール」と注文する同僚の山本という男がいる。

 ――彼は自宅に帰ったら、やはりとりあえずテレビをつけるに違いない――。

 そう考えた京子は、山本の部屋について行った。


 しかし、彼の部屋にはテレビがなかった。

 少し驚く京子。

 さて、だとすると「とりあえずスマホでSNS」なのだろうか? 今どきっぽく。


 京子がそんなことを考えていたら、山本は、おもむろにとりあえずビールを飲み始めた。あー、そういう人なのね。


 ともあれ結果を急ぐと、彼の部屋にとりあえずついて行った京子は、とりあえず山本に抱かれたのだった。とりあえずめでたし。

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