普段の人間関係

第1話

昔、会社勤めしていた頃の事。

仕事は正確なのですが、

言い方がきつい為にみんなに敬遠されている女性がいました。

「頭直せ、このボンクラ！」

と、後輩を怒鳴ったり、上司にまでたてついたり、

あまりに怖いのでみんなで怒らせないように気を使っている存在でした。

ある時、その人が物につまづいてド派手に転びました。

「イタタ」

と言いながらしばらく起き上がれません。

周りは知らん顔で、誰も何も言わず、

こういう時って普段の人間関係が表れるなと内心思っていました。

後で聞いたらみんなも同じ事を思ったようです。

後日、同期が物につまづいてド派手に転びました。

しばらくしても起き上がらないので

「どうしたの？大丈夫？」

と言いながら十四人くらいで一斉に駆け寄りました。

打ち所が悪くて気絶でもしているのかと思ったのです。

転んだ本人は、涙を流しながら笑っています。

彼女が小声で言いました。

「痛いけど、みんな、来てくれて、嬉しい」

…普段の人間関係が表れるねえ。