第14話
[ たちまち訳あり女子 ]
海学校内、保健室。
蒼詩ふみは何かがプツンと切れたように、普段は違う一面が見えた。それに戸惑う紀亜は何も出来なかった。
瞬冶は自分が何とかしなといけないと感じて、先生へ保健室に行くように伝え、紀亜へは必要だと同じく来るように話した。
保健室の休憩する場所へ瞬冶・紀亜が椅子に座り、蒼詩はその場所にあるベットに入って休んでいた。
『ん、ご、めんなさい。2人とも。』
『あー、俺は大丈夫。』
蒼詩は言葉が詰まりつつも、二人へ謝罪をしていた。
『ふみちゃん、ごめん私。』
『きあちゃんは悪くないよ。私のせい。』
二人は気まずそうに話していた。
(それにしても何が蒼詩さんを?)
後方から瞬冶を呼ぶ声がした。
『好一君、ちょっと席外すからね。少し話を聞いてあげてね。』
『分かりました。やってみます。』
『変な事だけはしないように!』
『わ、分かりました。』
瞬冶は保健室の先生から、室内の管理と蒼詩のことを任せれた。
保健室の先生との会話後、瞬冶は蒼詩の相談に乗ろうとする。
『蒼詩さん、俺らに相談して欲しいんだ。どうかな?』
『わ、私からも。ふみちゃんの事をもっと知りたい!』
二人は蒼詩へ相談を提案した。
数秒後、彼女は口を開いた。
『こ、わいの。』
『『わい?』』
『怖いのよ!』
彼女の言葉に場が凍る。
『蒼詩さん何について怖いの?』
瞬冶の返答の後に紀亜が頭を前後に振る。
『ふ、2人の事が嫌いになりそうで怖いの。』
『えとー、』
『え?』
瞬冶と紀亜が蒼詩の言葉で疑問が浮かぶ。
『私の両親は凄く偉い立場の人で、周りからは「才ある家庭」って言われていてね。私は蒼詩の名に泥を塗りたく無くて生きてきた。生徒会や、勉学、運動を頑張ってきた。でも、ここに入って貴方達の存在を知った。』
『なるほど。』
『わ、私?』
彼女の話を二人はしっかり聞いている中で自分らの存在について疑問が再度浮かんだ。
『そう、両親からは出来て当然と思われている。
特に、父には迷惑をかけれないから頑張ってきたの。
だから、貴方、きあちゃんへ嫉妬していたの。だけど、きあちゃんは私や、みんなに良く接してくれている。
そんな貴方へ嫉妬する自分が嫌で私を表現出来ない。
私、どうすれば良いか分からないの。』
『ふみちゃんそうだったんだ。』
紀亜は彼女の思いを理解していた。
『蒼詩さんは、周囲の期待やプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、自分自身を守るために努力を重ねてきたのだろう。同時に他者との比較や嫉妬が、自分をさらに苦しめる要因になっている。』
『そうよ。でも、、、』
蒼詩の言葉の後に紀亜は話を切り込んだ。
『私も、最初は周りの目が気になって仕方なかった。
でも、私は貴方と言う、1人の友人に理解してもらえた!』
『私なんかきあちゃんの眼中には無いと、、、』
『そんな訳無いじゃない!』
紀亜は蒼詩へ真っ直ぐに話していた。
彼女の言葉に頷いた。
『私たちの価値は、周りの期待や成績だけじゃない。』
彼女は少し驚いたように目を丸くし、言葉を選ぶように口を開いた。
『ありがと。でも、どうやって私を表現したら良いのか分からない!』
不安なままな蒼詩へ俺は少し言葉をかけたくなった。
『それなら、少しずつ自分の気持ちを話していくのは?』
『そうよ!私たちも、あなたのことをもっと知りたいし、支えたいと思ってる。』
『でも、このままじゃ、貴方達に迷惑しかかけない。
だから、私は心を鬼にして貴方達を否定し、嫌わないといけないの!』
彼女は悲しそうに自分から出た言葉に苦しむ。
『私は嫌われたっていい。だけれども、貴方がこんな状態なのは嫌!これは建前じゃない。ふみはすごーく頑張り屋さんでみんなに頼られている。私の自慢の友達!ってのじゃダメ?』
紀亜らしい優しくて少し子どもっぽい言葉だった。
(やっぱり、流石だよ紀亜。)
瞬冶は少し笑みをこぼしていた。
『ふふ、やっぱり紀亜はずるいよ。ありがとう。私、頑張ってみる、きあの自慢の友達として。』
その言葉に、彼女の心は少し軽くなったようだった。
『紀亜って呼んでくれた!』
『え、う、うん。きあもふみって呼んでくれたし!』
『ん。わかった!ふみ。』
俺は相談の解決だと思っていた。
『おっし!一件落着だな。』
『なんで、瞬冶が話を締めるのよ。まさか、ふみを運んだだけで自分の功績だと思っているの?』
『あ、それは』
俺は紀亜から問い詰められて目が泳いでしまいっていた。
瞬冶は蒼詩へ助けてもらおうと話を振ろうとした。
『しゅ、瞬冶くん!』
『はい!』
『私あまり覚えてないのだけど、私どう運ばれた?』
『えっとー、』
瞬冶は黙り込み赤面をしていたので、それを見た蒼詩は不安がっていると、紀亜が大きく発言して。
『おんぶよ!』
『おい!』
『え、えぇー。』
紀亜以外は赤面している。
『大丈夫よ、私が何もしないように見張っていたから!』
『そ、そうなの。きあが言うならー、だけど瞬冶くんちょっと耳を貸してくれない?』
『はい?』
俺は彼女の言う通り耳を近づける。
『あ、あの私そんなに嫌じゃ有りませんので。』
『え?というと。』
『2人とも何それ、もうそういう関係』
『『ち、ちがーう!』』
彼女たちの間には、少しずつ信頼と理解が生まれていた。お互いの存在が、支え合う力になっていくことを、彼女は感じ始めていた。
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