第11話「序章編LAST:初報酬とレベル上げと魔王軍」


クソゲー雑学:6


ボス紹介:(公式攻略本【ドラグーン・ブレイド ―漢の冒険極意ノ書―】より)


魔王軍八輝将 コマンドゴブリン


☆ステータス☆

HP:200 

防御力:40 

攻撃力:70 

魔法攻撃力:0 

魔法防御力:70 

魔力:0  

幸運:32 


レベル12

種族:ゴブリン

特技:攻撃号令、剣撃、突進


・実直な性格。ゴブリンの中でも知能が高く群れを統率する力がある。先代の魔王とは良好な関係だったが、ブルーブラッド2世とは関係が悪かった。実戦経験なく無計画で高飛車な彼が嫌いだったらしい。だが一応魔王なので仕方なく従っていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―フロンテイション・ギルドマスターズ本部-


「おめでとう! 君たちはこれで晴れて冒険者だ!」


ギルドマスターズのリーダー、ルータス・Bに冒険者認定書を貰い、尚樹とヴェルザンディは冒険者としてギルドマスターズに登録されることになった。


初期報酬として回復ポーションを5個 ロングソードを2本 助成金として1000Gを貰った。


(はっきり言ってしょっぱい報酬なんだよな~)


普通のゲームなら妥当な品だが、ドラグーン・ブレイドにおいてはかなり安い報酬である。

薬と剣はともかく、この後金はすぐになくなるからだ。


ギルドマスターズでの冒険者登録を終えると、次は冒険鑑定屋へと向かった。そこで冒険鑑定士にお金を払いレベルを上げてもらう。レベル2から9までは1つ上げるごとに500Gを支払う必要がある。1000Gをヴェルザンディと分け合い、それぞれレベルを1つ上げた。


後はマイとアイテムをそれぞれ半分ずつ分け合い、尚樹とヴェルザンディは冒険者として旅をすることになるが、そのために次の段階に進まなければならなかった。

ギルドマスターズに戻り、係の人に魔王軍のことについて聞くと。


「魔王軍討伐に行くんなら聖剣が必要だぞ」


【聖剣】、文字通り聖なる剣のことだ。材質は不滅の金属であるオリハルコンで作られており、攻撃力と壊れにくさは武器の中でもとびぬけずば抜けている。


普通のモンスターなら武器屋で売っている武器でもいいが、魔界四天王クラスを相手にするには【聖剣】が必要になるらしく、そのためネオガイア最大の王国・ブリダッタスにいる国家認定鍛冶職人の名工、ジャン・ベルーガ・コルテスによってつくられた【聖剣】を手にしなければならない。


だがコルテスは気難しい頑固な職人で並みの冒険者には聖剣を作らない。そのため彼に聖剣作りを依頼するには貴族からの許可状が必要となる。


そしてこのコルテスから聖剣を貰うまでの内容はこのゲームのクソ要素の1つとして有名な箇所でもあった。


「次は聖剣を取得に向かいましょう」


尚樹とヴェルザンディと共に次の目的を決め、そのための準備を始めることにした。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―魔界・ブルーブラッド城・会議室


人間界の地下にある光の届かない場所に存在する魔界。その頂点たる魔族、ブルーブラッド城で怒号が鳴り響いていた。


「ええい! あの役立たずが! 冒険者でもない人間風情に負けやがって!!」

「落ち着いて下さい!ブルーブラッド2世様!」

「黙れ! 2世を付けるな!」


会議室の一番豪華な玉座に座るブルーブラッド2世ことチャラン・ブルーブラッドは激怒していた。これ以上冒険者が生まれることを防ぐため魔界八輝将に出撃命令を出したが、コマンドゴブリンしか出撃せず、しかも失敗に終わるという事態に追い込まれたので腹を立てていた。


「だいたいなぜあいつしか出撃していない! 他の奴らはどうした!?」

「他の八輝将は【ウロボロスの魔剣】を探索に各地に散らばっております。チャラン様のご命令での最優先事項という事で」


ため息を我慢しながら魔界四天王の紅一点、イレイナが報告する。


「くっ…。なら【ウロボロスの魔剣】はまだ見つからないのか!?」

「魔剣は勇者との戦いの後に人間がどこかの地に封印されたらしいのですが、候補としてブリダッタス、龍仙、アイアンスタリオ、日陽の地を探してますがまだ発見はしていません」

「ちっ…役立たずどもめ。【ウロボロスの魔剣】さえあれば親父が出来なかった地上制圧も容易だというのに…!」

「仕方ありません。人間側も勇者を失い必死に抵抗をしているのですから。それと魔王様に龍仙にいる八輝将・シュラから兵の増員と武器・物資の補給をしてほしいとの連絡が…」

「ほおっておけ! 役目もろくに果たせないクズに施しなど必要ない!!」

「はあ…」

「まったくどいつもこいつも役立たずばかりだ! 親父もよくこんな無能な奴らを部下にしていたものだ! 」


「まあ落ち着いて下さい大魔王様」

「アロン!」

「我々も力が及ばずいたたまれない気持ちでおります。しかしながら【ウロボロスの魔剣】に関して良い情報が入りました」

「ホントか! ククク、貴様はどこぞの役立たず共と違って有能だな!」

「貴方はいずれ魔界と地上、果てには天界すらも支配できるお方です。そのためなら出し惜しみはしません」

「そうかそうか! 真に大義である!」


アロンという魔族が出てくるとブルーブラッド2世は一転してご機嫌になりアロンを連れて外出の準備もする。


「いいか! 私は有能な奴は評価するが役立たずはとことん切り捨てる! 貴様も私の為にもっと一生懸命働くのだな! 私は大事な用があるので失礼する!」

「はっ」


ブルーブラッド2世はアロンを連れて会議室から出ていった。


「…クソが…!」


足音が聞こえなくなるのを確認するとイレイナは鬱憤を晴らすようにイスを蹴り上げた。そして会議室を出て自室に戻ると酒と人間界から取り寄せたアップルパイを取り出し、手づかみで口に運び、酒で腹の中へと押し込んでいく。


「ハグハグハグハグ…!」


ストレスの限界に達し、大量のアップルパイを腹に詰め込み、酒を飲めるだけ飲むと怒号を上げた。


「私だって好きでお前に従ってるんじゃない! あの偉大で寛大なルシファー様の息子だから形だけでも従ってるだけだ! ああああああああああああああああー!!」


子供の癇癪のように机を叩き、家具を蹴り飛ばす様に四天王の面影はなかった。


「ルシファー様! なぜあなた一人であの世に行かれたのですか!? どうして私達をご一緒させてくれなかったんですか!? 勇者よ!! なせ私達を生かした!? うわああああああああー!!」


感情の制御が出来ず泣き叫び、床に突っ伏した。


「もう魔王軍は限界に近いです…。あのバカ2世が無計画に地上制圧を計画するせいで資材も底をつきそうです…。ああ、ルシファー様…。この命尽きる前に貴方にもう一度お会いしたかった…!!」


イレイナは現状を嘆き絶望する。

先の勇者軍との対戦で魔王軍はリーダーを失い、蓄えられていた資材や武器の備蓄も半分以上失っていた。当分は準備をしつつ魔界の再建をしようとしていたがブルーブラッド2世はそれよりも自分の名声の為に地上制圧を魔界の住人達に向けて言い放ち、準備もしないまま、侵攻に乗り出したのだ。

だが人間達も無抵抗なわけがなく、モンスター達を倒しながら均衡状態を保ち消耗戦となっている。どちらも決定打に欠けており、このままでは敗北を迎えるのは目に見えていた。


イレイナは魔界四天王で資材管理もしており、前線で戦う魔王軍の状態を知っている故に歯がゆい心境であった。



「…まあ、あんな馬鹿でも神輿にはなるからな…」


魔界四天王の1人、ネクロマスターは物陰で不敵な笑みを浮かべていた。



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