家族
liol
第1話 家族
私は家族が嫌いだ。
中途半端な田舎の一軒家という隔離された世界で、母親と父親とあとは犬の三人と一匹で暮らしている。車で20分程度で着くところに母方の祖父母が住んでいて、長期休暇の時には母方の親戚が集まる。親戚のことは嫌いじゃない。けれど親のことは嫌いだ。
きっと誰もが幼い頃は大人に夢を見るだろう。きっとこの人たちは何でも知っていて、何でもできて。そういう人なんだろうと。私がその例に漏れなかったのかは今となってはわからない。
というのも、強いストレスからか、幼いころの記憶がほとんど消えており、中でも家族の記憶はほとんど残っていないからだ。数少ない残っている記憶といえば、震災の瞬間の記憶くらいのもので、ほかの記憶はほとんど幼稚園の友達と遊んでいる場面が断片的にあるだけのものだ。
なぜ親が嫌いなのか。理由は明確で「助けてくれないから」だ。保護者という言葉に私は期待をしすぎたのかもしれない。母親も父親も人間で、彼らなりの理想があるということを受け入れられないのかもしれない。私にはそこの折り合いをつけるのが下手くそだったのかもしれない。
これを読んでいる人にはそのように映るだろうという覚悟を持ってここからは書いていく。
私が初めに親への信頼を失ったのは小学校一年生の時だ。小学校には縦割り班という、一年生から六年生が学年で2~3人ずつ所属して作る班があった。私は当時その班の上級生にいじめられていて、みんながやりたがらないような掃除場所を押し付けられるなどしていた。まあ一年生にとっての六年生はおとなだ。言い返せるはずもない。しかし私は不注意だった。親につい、言ってしまった。上級生のことを。それで解決するならよかった。けれど待っていたのは担任からのいじめだった。授業中に、やってもいないことでみんなの前で怒られるというのは当時まだ優等生ぶっていた私にはきついものだった。この後でどうしたのかはわからない。覚えているのはこの一件で大人に対する期待は失せたということだ。
それから時が流れて、中学生になった。TwitterやpixivなどのSNSを見るようになった。そこで私は自傷行為を知った。この辺の詳しい話は省略するが、要は結局親が必要としているのは世間体のいいお利口さんなんだってことを改めて認識させられたということだ。
それから、受験で無理やり志望校を変えさせられたこと、殴ってくることに抗議したら家族なんだからいいだろうという意味の分からない反論をされたこと、話したことを聞いてなくて私がそもそも話してないことにされて悪者にされること。
数え上げたらきりがないくらいに親のことを嫌いになるシーンがある。
これらすべてを許せるくらいに親を好きになれるイベントがあれば、或いはそんなものはなくても根底でずっと信じていられたら。そんなことは私にはもう夢のまた夢の話だ。
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