第11話

イゼが虫悪を討伐した頃、虫悪の魂が何かに導かれるように闘技場に引き寄せられていた。


ゼロはこちらに向かう虫悪の魂に気づく。




ゼロ「あれは…七大悪の魂…勝ったんだなイゼ…」




想像を絶する痛みを耐えたところだが、ゼロはそのようなことを構わずに虫悪の魂を取り込む。




ゼロ「…グッ!?」




あの痛みが再度発生する。だが、今回は一度取り込むことに成功したからか痛みは10秒程度で収まった。




ゼロ「これで二つ目…」




痛みを耐えたが、限界が来ていたのかゼロは意識を失い倒れる。死体にでもなったかのように静止してしまう。




声が聞こえる。名前を呼ばれている気がする。とても聞き覚えのある声で…




イゼ「ゼロ〜!起きて〜!」


ゼロ「…」




目を覚ますと見知らぬ部屋にいた。俺はベットで横になっていた。




イゼ「闘技場ではゼロが意識を失ってて玉座ではサンが意識を失ってたからビックリしたよ〜!」


ゼロ「ここまで運んでくれたのか…」


イゼ「宿まで二人を運ぶの大変だったんだから!」


ゼロ「ありがとう…少し身体が休めた気がする。」


イゼ「そういえば、今国民達が七大悪を倒したお祝いに外で宴してたよ!美味しい食べ物たくさんあったから一緒に食べに行こ!」




ゼロは正直まだ完全には身体を休めておらず、少し動くだけでも痛さを感じてしまうほどだ。


だがゼロはここまで助けになってくれたイゼの誘いを断ることはできなかった。




ゼロ「それじゃあ、一緒に何か食べに行こうか。イゼ」


イゼ「やったー!美味しい食べ物ゼロにも食べてほしかったから嬉しい!」


ゼロ「そういえば、サンは誘わないのか?」


イゼ「サンなら先に行ったよ〜!「ゼロ達の勇姿を国民達に伝えなければ!」とか言いながら宿を出てった!」


ゼロ「…そうか。」




勇姿なんて無い。俺はただ力を借り、勝利した。ゼロはそう思いながらイゼと共に宿を出た。




宿を出ると、ゼロとイゼに国民達が目線を向けている。


そして少し先にある大広間から、サンの声が聞こえてくる。




サン「私はこの二人を!この国を救いし名誉ある英雄として!遠い未来永遠と語り継がせる!英雄を讃えよ!太陽国サンを救いし英雄のために喝采を!」


国民達「うおおおおおおおおおおおお!!!」




ゼロは本当に恥ずかしい気持ちになった。感謝されるのは嬉しいことだ。だが、英雄として讃えるはいくらなんでもベクトルが違う!俺はここまで感謝されることはしていない!




イゼ「英雄だって!カッコよくていいじゃん!ゼロは私のこと助けたりと英雄気質だよ〜!」




早く夕食を済ませて宿に戻ろう…ゼロはそう思った。




ゼロ「やっと宴が終わったか…」


イゼ「美味しいのたくさんあったね〜!」




イゼが満足そうな表情をしている。少しは宴に出た甲斐があった。




ゼロ「そういえば、さっきサンから七大悪に関する情報を聞いた。「闘国コンバティメントの国王、彼は七大悪に関する情報を持っていると聞いた。太陽国サンで十分に身体を休めたら行ってみるといい。」ってな。」


イゼ「またかなり遠い…いつ行くの?闘国には」


ゼロ「明日の朝、太陽国を出る。」


イゼ「身体の方はもう大丈夫なの?たくさん歩くなら万全にしとかないと!」


ゼロ「心配してくれてありがとう。けどもう大丈夫だ。」


イゼ「無茶したら怒るからね!?」




実際のところ、あまり万全じゃない。だが、今も何処かで悪種族による被害が出てると思うと…あの最悪の過去を思い出す。




ゼロ「明日は早い…今日はもう寝よう。イゼ。」


イゼ「そうね!それじゃあおやすみ〜!ぐっすり寝てね!」


ゼロ「言われなくても、ぐっすり休むさ。」




翌日の朝




………何だ?この感触。抱きしめられてるような感覚がする。イゼは別の部屋のハズだ。一緒に寝てるわけ……




イゼ「えへへ〜…猫ちゃん…待て〜…zzz」




イゼだった。なんで同じ部屋で寝てんだ?とりあえず起こして聞いてみることにした。




ゼロ「おい…起きろ。イゼ」


イゼ「ん〜…おはよう〜…ってゼロ!?なんで私の部屋にいるの!?」


ゼロ「こっちの台詞だ。なんで俺の部屋で、俺のベットで、俺を抱き枕にして寝ていた?」




不思議そうな顔をするイゼ。そして突然、謎が解けたような顔をし、思い出したことを話す。




イゼ「そういえば、真夜中にお手洗いに行ってね〜寝ぼけて部屋に戻りに行ったから、隣のゼロの部屋と間違えちゃったかも!」


ゼロ「かもじゃなくて間違えてんだよ。」


イゼ「ごめんなさいゼロ!次からは気をつける!」




朝から一気に疲れた気分だ。早く支度を済ませて、闘国を目指そう。




ゼロ「イゼ、忘れ物は無いな?」


イゼ「大丈夫!早く行こうゼロ!」




太陽国の門を通ろうとしたその時だった。




サン「もう行ってしまうのか?ゼロ、イゼ。」


ゼロ「…少しでも早く着きたいからな。七大悪が何か起こす前に、殺さなければならない。」


サン「そうか…行く前に一つ。お二人の旅に、太陽の加護があらんことを。」




その言葉を貰い、ゼロとイゼは微笑みながら別れを告げた。




ゼロ「イゼ。俺の旅に着いてきて本当に良かったのか?次の国では、今以上に死闘があるかもしれない。太陽国に残った方が…」


イゼ「私はゼロと平和を取り戻したいの。だから何を言われても、この旅を抜けることは無いよ。」




イゼの想いを聞き、嬉しく思う。共に平和を望んでくれるこの想いに応えなければとゼロは思った。




ゼロ「イゼ。俺と一緒に取り戻そう。平和を。」




その発言を聞いたイゼはとても嬉しそうな笑顔で言う。




イゼ「うん!一緒に取り戻そう!平和を!」




二人の旅は、本当の意味で始発点を迎えた。

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