夢と願う過去

 俺は幸せに生きていた。小さな村で毎日、家の家事を手伝い、友人と遊び、父さんに魔術を教えてもらい、母さんに教えてもらった魔術を見せて褒めてもらい…




 少年「ぐぬぬ…ダメだ!また失敗した!」

 父「まだこの魔術はお前には難しかったか~!ま、練習あるのみだぜ!」

 少年「うん!俺練習しまくって絶対この魔術覚えてみせる!」


 俺は父さんが好きだった。


 少年「よっしゃ!また俺が1位!」

 友人「くっそぉ~!やっぱ走るの速ぇな~!」

 少女「ほんと!私達じゃ勝てないよ~!いいな~!」

 少年「何度でも挑戦受けるぜ!俺は優しいからな!」

 友人「今度は負けねぇからな!俺の全力ダッシュみせてやるぜ!あの木まで競走だ~!」

 少年「あっ、ズルいぞお前!待てぇ~!」

 少女「あっ!二人とも!待ってよぉ~!」


 俺はあの二人の友人が好きだった。


 少年「母さん!みてくれよ!これ!」

 母「あら、お父さんの魔術を覚えたのね♪凄いわ♪」


 俺は母さんが好きだった。




 俺が弱かったから奪われた。


 少年「おい!おい!しっかりしろよ!なぁ!なんでなんも言わねぇんだよ!」


 村は燃え、焼き尽くされてく。俺の目の前には友人が二人。声は出なくなっていた。


 父「行こう…ここにいたら命が危険だ。」

 少年「父さん!嫌だ!俺は二人を連れてかなきゃいけないんだ!」


 俺は村の避難用地下に連れてかれた。友人の二人を見つめながら。


 父「いいか?ここからは絶対に出ちゃダメだからな。」

 少年「父さん!行かないで!アイツに殺される!」

 父「……母さんを頼むぞ。誰よりも優しくて強いお前ならできる。」


 俺は泣き叫んで父さんを呼び続けた。最後は優しく微笑んでくれていた。


 ??「ここに逃げたヤツがいたな。」

 母「……お母さん。一緒に生きていたかったな。」

 少年「母さん…?何言ってんだよ…」


 母さんは次の瞬間、俺を突き放し避難用地下から出る。


 少年「ッ!?母さん!?今出ちゃダメだ!」

 ??「ほう。自分から出てきたか。」


 俺は外に出て母さんを連れ戻す勇気は無かった。死ぬのが怖かった。


 避難用地下の扉を少し開け地面から顔を出す。母さんとアイツの姿が見えた。そして俺は………目の前で殺される母さんと目が合った。


 母「ゼロ…幸せに…生きて…」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ゼロ「母さんッ!」

 イゼ「うわっ!?ビックリした…大丈夫?急に叫んで起き上がって。」


 太陽国サンから少し離れた森の中にいた。イゼは心配そうに俺を見つめる。


 ゼロ「大丈夫だ…夢を見ていただけだ。」


 夢と思いたい過去を思い出しただけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る