第2話 リチュ
裕福ではなくも平和な村、その近くの森の木の枝の上で村を見ているスライムがいた
「『方法は貴方に任せると言いましたが。ここ一週間、貴方ここから動かず何をしているのですか?』」
いつの間にか自分の隣に座っていた青髪の少女にスライムは驚き少し距離を開ける
「イ…ンエ…ン…ミル…オヘンヨウ…」
スライムはなんとか体から音を出し人間族の言語を話す
「『あら?アンタもう人語を話す…鳴らす?ようになったのね』『ま、結果が出てる以上責めねぇし研究に観察が必要なのも分かるがお勉強ねぇ、それ以外になんか考えねぇの?』」
「ムラ…イク。マズ…ハナ…ス、テイルヨウニ…スル…」
「『見て盗むではなく直接話を聞くと・・・そういう事か』」
「デイタラ…スライムヲ…マモル…オネガイ…スル」
人間族にスライム族を守ってもらう、そのように捉えられるスライムの言葉に少女は笑う
「『いや無理でしょ』『希少価値は高値になりますしねぇ』」
スライムが不思議そうに少女の方に近寄る
「『なんでもねぇよ』『アハ!そんなことより面白い事おーもいつーいた』」
少女は突然立ち上がり手を腰に当ててスライムを見下ろす
「『アンタ人に化けて村に行くつもりなんでしょ?しかもアタシが思ってたこっそり人間族に化けて知恵を盗むとかじゃなくて直接人間族に聞く』『それなら名前がいると思うんだ』」
「ナ…マエ…?」
「『人間族が個々を判断する為のマウスの番号と同じものです。人間族は誰の話をしているかなんかで名前を使用するんです』『で、アンタの名前をアタシが付けてあげる。リチュなんでどう?』」
「リチュ…?」
「『そう、貴方の名前はリチュです。うんうんいい名前ですね』」
少女は口を手で抑えながらうんうんと頷く
「リーチュ…リチュ…リチュウ?」
スライムはつけられたばかりの自分の名前を繰り返す
「『気に入って貰えたようで良かったです』『んじゃ俺はもう行くわ。あばよ』」
「アンタ…ナマエ…?」
スライムが少女に近寄り少女の名を聞く
「『ああそういえば私名前を名乗ってないですね。私の名は『モルガナ』こんごともよろしくお願いしますねリチュさん』」
『モルガナ』はそう言うと突然木から落ちていった。リチュが確認すると既に『モルガナ』はいなくなっていた。
1ヶ月後、リチュは様々なスライム達にスライム族で集まり村を作る話をして回った。
5年生きたリチュですら生き残れるならよく分からない作戦をやろうとするのだから2、3年生きたほかのスライムのなかに、村を作ることを否定する者は現れなかった。
リチュはとある目的のため少し危険だが村を作るための森にいるスライムだけでなく、火山や沼地のスライムにも村の話をし、1年経つ頃には50もののスライムによる小さな村が出来上がっていた。
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