第29話:疑心暗鬼の教室
朝、教室に向かうとみんなザワザワしていて、何かが起きたことがすぐに分かった。
「みんなどうしたの?」
「それが…」
みんなが集まっている方に目を向けると、そこには切られた衣装があった。
私は驚きとショックで言葉を失った。
そんなにビリビリに破られていた訳じゃないけど、一箇所だけ大きく切られていた。
誰かの仕業としか思えない。
「そ、んな、」
私に悪口を言ってきた人の仕業なんだと思う。
まさか、私にだけじゃなくて、みんなに被害が及ぶことまでするなんて。
胸が痛み、怒りと悲しみが入り混じる。
「一体誰がこんなことを…」
クラスメートの中で犯人探しが始まった。
私は不安と恐怖で心がいっぱいになる。
「昨日教室の鍵かけたの誰」
「私だけど。ちょ、ちょっと待ってもしかして私疑われてる…?」
「そうじゃないけど、」
私が一番恐れていたことが起きてしまった。
クラスの雰囲気が悪くなり、みんなが疑心暗鬼になっている。
「みんな落ち着いて、今犯人探ししたって意味ないよ」
私だって誰が犯人か知りたいし。どうしてこんなことをするのか問い詰めたい。
だけど、私たちが今しないといけないことはそんなことじゃないから。
「でも、」
「美月ちゃんの言う通りだよ。何とかするからみんな安心して」
そう言ったのは、明日佳だった。
「でも本番は明後日だよ?短時間でどうやって衣装を作るの?」
「一箇所だけだから、刺繍でもすれば大丈夫。むしろ前よりもっといい感じになりそうだから犯人にお礼言わないとだね」
明日佳の前向きな言葉に少し救われる気がした。
「じゃあ衣装は明日佳にまかせて、私たちはいつも通り練習しよ!」
監督がみんなに声をかけた。
「そうだね」
いつも通り…気にしないようにしてたのに、心の中では不安が消えない。
まさか、これ以上悪いことは起きないよね、
その後、廊下を歩いていると、二人のクラスメートがコソコソと話しているのが聞こえた。
今、私の名前が聞こえたような
「ねぇ、あのドレス破いたの美月なんじゃない?」
私はその言葉に驚き、足が止まった。
「え?まさか、だって主役だよ?」
「だからだよ」
「どういうこと?」
「演技するのが嫌になって…とか」
心臓がドキドキして、息が詰まるような感じがした。
「えぇ、いやまさか…」
「だって、美月だけ監督に止められてるじゃん?普段は完璧装ってるからプライド傷ついたんじゃない?」
私がどんな思いで今まで…
どんなに頑張って練習してきたのか知らないくせに、
「あぁ、確かに。ありえるかも」
「さっきも必死になって犯人探しはやめようって言ってたじゃん?」
そういうつもりで言ったわけじゃないのに、
「自分がしたってバレるのが嫌だからってこと?うわ、怖ぁい」
「見る目変わるよねー」
どうして何も知りもしないのに、平気で人が傷つくことを言えるんだろう。
私はその場に立ち尽くし、涙がこぼれそうになるのを必死にこらえた。
その時、背後から肩にそっと手が置かれた。
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