第17話:文化祭のヒロイン

「それでは文化祭の劇について話し合いたいと思いまーす!」

文化祭の実行委員が元気よく宣言した。


高校生になって二回目の文化祭。

二年生の出し物は劇と決まっている。


「定番のシン○レラとか?」

と誰かが提案するが、すぐに


「定番過ぎねぇ?」

と別の声が返ってくる。


「じゃあどうするのよ〜」


「ありきたりなのは嫌だよな」

「だな。そうだ、演劇部いるんだし台本とか作れたりしない?」


期待の眼差しが演劇部のメンバーに向けられる。


「私、作れるよ…」

と、演劇部のメンバーが少し恥ずかしそうに手を挙げると、


「すげー!」

クラスメートたちは驚きと喜びの声を上げる。


「ジャンルとか教えてくれるなら作るけど…」


「恋愛で!」

誰かが即答する。


「魔法使えたりしたらいいんじゃない?」

別のクラスメートが提案し、みんなが賛同する。


「もちろんヒロインは…」


と、誰かが言いかけると…


みんなの視線が一斉に私に向かう。


え、まさか、


い、いやいや。

まさか、


「美月ちゃん!」


私が、ヒロイン…?


「私…?」


心臓がドキドキと高鳴るのを感じながら、自分にヒロインが務まるのか不安になる。


「となるともちろん、相手役は…蒼大くんでしょ」


と、クラスメートたちは一斉に笑顔で蒼大を見つめる。


なんか、私のせいで蒼大まで、申し訳ない。


「で、でも、私、演技なんて…」

顔を赤らめながら小さな声で言う。


「心配しないで、みんなでサポートするから!」

と、クラスメートたちは私の肩を叩きながら笑顔で言う。


蒼大の方をちらっと見ると、優しく微笑んでくれた。


まるで私の気持ちに気づいて、背中を押してくれているように感じた。


「うーん…わかった。やってみる!」


___



「美月のクラスは劇何するの?」

お兄ちゃんが興味深そうに尋ねてきた。


「それはまだ内緒」

「えぇ、ケチー」


こうやっていつものように一緒にお昼ご飯を食べて、話もしてるから、怒ってはないはずなんだけどなぁ。


「ただの劇じゃないんですよ!美月が主演なので!」


と、歩乃華が嬉しそうに付け加える。


「へぇそうなんだ!」


ハードルを上げないで欲しい、、


「お兄ちゃんも去年、劇に出てたもんね」

私は急いで話題を変えた。


「出てた出てた」

懐かしそうに頷く。


「何したんだっけ」

「えっと、ラプ○○ェルとシン○○ラをミックスさせたやつ」


「あぁ、そうだった。なんか凄かったもんね」


参加型(?)で、結構盛り上がってたのを覚えてる。


王子様が客席に座ってた女の子を掻っ攫って行った時はびっくりしたなぁ。


「特別賞でしたっけ?」


「そうそう。懐かしいなぁ。にしても、美月が主演か、気合い入るね。カメラ持って見に行くね」

「ありがとう、、」


私が気にしすぎなのかな。


普段通りの気もするし…

でも、なんかちょっと違う気もするし…


心の中で自問自答する。


「颯人さんのクラスは何するんですか?」


「俺のクラスは…その、」

少し照れながら口を濁す。


「何?」


「執事…カフェ、」

と、小さな声で答える。


「なんですかその神イベント!?絶対行きますね!」


歩乃華の目がキラキラ輝いた。

すっごく興奮してる。


お兄ちゃんが執事か…

多分似合っちゃうんだろうな。


「いや、来ないで欲しいんだけど…」

お兄ちゃんは困った顔をするけど、


「絶対行きます!」

歩乃華は断固として言い放つ。


「ふふ。私も歩乃華と一緒に行くね」

その姿が面白くて、思わず笑ってしまった。



「えっ。私、美月とは行かないよ?」

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