第14話:恋の試練

教室に戻ると、授業が始まるまで少し時間があった。蒼大と私は、教室の隅にある窓際の席に座り、静かに話し始めた。


「さっきの話だけど…」

蒼大が少し照れくさそうに言った。


私の心はまだ蒼大の言葉の続きを待ち望んでいた。


「うん、何?」

私は彼の顔を見つめながら答えた。


「美月、俺は『ない、ない!なーい!』」


今度は歩乃華に邪魔されちゃった。


「歩乃華、落ち着いて。どうしたの?」


「宿題のプリントがないの!」

歩乃華は焦った様子で答えた。


「プリント?家に置いてきたり…」


「してない!今日の朝、ちゃんとカバンに入れたもん!なんでないの!?昨日の夜、久しぶりに真面目に勉強したのに!」


歩乃華は必死に言った。


久しぶりにって、そんな声をだいにして言うことじゃ、、真剣なんだから笑っちゃダメだ。


「どこかに置いたとか、机の中は?」

蒼大が助け舟を出した。


「全部見たけどないの!」


歩乃華がまだ見てなさそうなところ…

「じゃあ、どこかに挟んだとか、教科書は?」


「教科書…あ、あった」


歩乃華はようやく見つけたようで、ほっとした表情を見せた。


「見つかって良かったね」

私は微笑んだ。


「お騒がせしてすみません、、」

歩乃華は申し訳なさそうに言った。


「いいんだよ」


ちょうどその時、教室のドアが開き、先生が入ってきた。


「席つけー」


私たちは急いで席に戻り、授業に集中しようとした。けど、心の中はいっぱいだった。


何度も蒼大と話そうとしたけど、なかなか二人きりになることは出来なかった。


昼ごはんの時も、なんでだかお兄ちゃんによく話しかけられて、蒼大とまともに話すことすら出来なかった。


そして、気づけば放課後。


「美月ー!帰ろ!」

「うん」


今日はもう、二人きりになれるチャンスないか。

仕方ない。


また明日話せば、


「歩乃華ちゃん」

「ん?」


「ごめん。今日は、美月を独り占めしてもいいかな?」

蒼大が少し照れくさそうに言った。


「独り占め…」


なんか、恥ずかしい


「っえ、それって、もしかしてそう言う…」

歩乃華が言いかけたその時、私のお兄ちゃんが現れた。


「美月帰るよー!」


お兄ちゃんの声が響いた。


げ、お兄ちゃんまで


「ここは私に任せて。二人で帰りな」


「え、でも…」


あんな問題児、歩乃華の手に負えないはず…


「いいからいいから。早く行った行った」

「じゃあ、お言葉に甘えて…」


私は蒼大と一緒に歩き出した。


明日、ちゃんとお礼言おう。


「また明日!いい報告待ってるからね!」


そう言って笑顔で手を振ってくれた。



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