ヒーローショー

 Mさん一家が、市内のショッピングモールで催されたヒーローショーを見にいった時のこと。

 吹き抜けの一階にあるステージで悪役と戦うヒーローを、Mさん達は二階の観覧席から応援していた。普段なら息子のN君が大はしゃぎするのだが、その日に限っては、Mさんの手をギュッと握って静かにしていたという。

「どうした? 眠い?」

 N君は首を横に振る。

「お父さん……あの人だれ?」

「あの人って誰だ?」

 Mさんが尋ねると、N君はステージの端を指さした。そこには、司会のお姉さんが立っている。

「いつもの司会のお姉さんだよ」

「違うよ、その後ろの人……」

 N君の声が心なしか震えている。だが、その人の後ろには誰もいない。

「なあ、あの人の後ろに誰かいるか?」

 奥さんにも確認したが、同じくわからないとのこと。

「ねえ、どんな人がいるの?」

 奥さんが尋ねる。

「変な人」

「変って……どんなふうに?」

「お顔が横にぐにゃあって伸びてるの。それで、こっち見てずっと笑ってるんだよ」

 それを聞いて、Mさんと奥さんは思わず顔を見合わせた。

 依然として二人には何も見えていない。となると、N君が何かと見間違えてることになるのだが、それにしては怖がり方が普通ではない。

 結局、これはもう帰った方がよさそうだと、Mさんらは早々にショーを抜け出したという。


 帰宅後Mさんは、SNSでそのイベント名を検索し、色々な人の投稿を見て回った。

 すると、二つだけだが、次のような投稿を見つけられたそうだ。


『今日○○のショーを見に行ったら、子供が途中から「怖い怖い~!」って泣き始めて大変だった……しかも理由がさっぱりわからず』


『○○が大好きなお兄ちゃんのために行ったイベントなのに、当の本人は終始静かで、下の子の方が楽しんでました(笑)。帰りに「今日楽しくなかった?」って聞いたら「もうあそこに行かない」とのこと。一体何が気に入らなかったのか……?』

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