第0話

「にゅうう…………ッハ!!!」

目を強く塞ぎたくなる様な光でわたしは目を覚ました。

「んな!?ここはどこだ!?!?」

周りを見渡すと、四方には壁、真上には白色の優しい色の天井。そして、本棚に一つの窓と部屋と部屋を区切るだけの扉。そして、この感触は多分だけど、ベットだろう。

何でここにいるんだ?そういえば昨日何をしていたんだっけ?

昨日の事を思い出そうとする。

ん?そういえば、わたしは昨日、何をしていた…?

自分の家は…自分の家とは?そんなことあったか?

もう一度、あたりを見回す。

遠くの方から何かが近づいてくる音がした。

「も、もしかして起きた!?」

その言葉を放ちながら区切るだけの扉は開いた。

「き、貴様!!貴様誰だ!!!」

わたしはベットから起き上がり、部屋の角に移動する。

「あはは…そんなに警戒しなくてもいいのに…」

メガネをかけて、黒い髪を下ろしたショートヘアーの女は両手を前に出して「落ち着いて…」と言った。

「わ、わたしの名前はマナ!足立真奈!その、あなたが私の家の前で寝ていたから、家の外に放っておくのもどうかな…って思って、私の家のベットに連れ込んだのよ。」

マナと名乗った女は明るめの声で自己紹介をした。なぜだろうか…聞き覚えのある声と名前だ。

「誘拐ではないだろうな!?」

だが、わたしはまだ、信じきれなかった。いや、この人は信じれるかもしれない…?なぜだろう…この自信はどこから出てきただろうか…

「え?うん!!誘拐とかでは断じてないよ!!」

マナはにこやかに笑いながらもわたしに話を続けた。

「その、嫌だったら自分の家に帰ってもらって構わないよ!!」

笑顔の状態のまま、マナは言った。

「………貴様のこと、信じるぞ?」

わたしはそういうと、正中線の沿っていた戦闘体制の状態から普通の姿勢に戻り、少し距離を置くも、歩み寄った。

マナはさっきよりも明るい表情で「ありがとう!!!」と言った。

なぜだか、懐かしく思う…

「そういえば、あなたの名前聞いてなかったね。お名前、なんて言うの?」

マナがそういうとわたしはすぐさま、答えようとした。

したはずだ。

「え、えっとお…」

なぜか、なぜか名前が出てこない…

どう言うことだ!?なぜ出てこない!?わたしの名前…わたしの大事な人が付けてくれた名前!!


「お、思い出せない…」

「え!?ど、どういうこと!?」

マナはメガネ越しに目を大きく開き、わたしを見つめる。

「その、お、思い出せないんだ…名前どころか、今までの記憶が…昨日、何をしていたのかが、思い出せないんだ…」

何か…嫌なことがあった気がする…

空白を開きながらも言った正直な言葉だった。

自分でも正直驚いてるが、それ以上にマナはわたしよりも驚いた様子で言う

「そ、それって記憶喪失ってこと!?!?」

「あ、ああ…そういうことだ…」

わたしは、溜め気味に放つ。

「そ、それじゃあ、なんか覚えていることとかある?記憶の中でさ!!」

「ちょっと待っててくれ、探してみる…」

わたしは記憶の中を探る。

でも…

「な、何もない…すまん…」

「あ、う、うん…でも、何か異常があると悪いし、今日、病院とか行ってみない?もしかしたら、何か分かるかも…」

「あ、ありがとう…」

時計の針が動く音だけが響く…

ん?時計?あ!!そうだ!!!

「ま、マナ!」

「ん?何?」

わたしは慎重にその言葉を言った。

「その…一つだけ思い出したことがあるんだ…」

わたしは恐る恐るそれを言うと、マナは当然、明るい声で

「え!?本当に!?」

「あ、ああ…その、時の魔王って、知ってるか?」

不意に浮かんできた時の魔王というワード。なぜか憎たらしい時の魔王というワード…

これはなにを意味するかは特にまだわからないが、とりあえず言ってみることにした。

もしかしたら、希望があるかもしれない…その希望を信じてだ。

でも…その先に絶望もあるかもしれない…

「え?いや、知らないけど…」

マナは、何それ?と言わんばかりの顔をしている。

「でも、時の魔王という単語がとても、わたしにとって重要な気がするんだ!!」

「それじゃあ、時の魔王が何か、調べるの手伝ってあげようか?」

「い、いいのか!?」

わたしは顔をマナに近づけた。

「ま、まあ、今日…というか、これから多分、暇でしかないだろうし…」

なんでだろうか。仕事をクビになった…?

「ほ、本当に良いのか!?」

わたしはさらに顔を近づける。

「ま、まあまあ…」

そしてわたしは少しだけ、距離を置かれる。

「それじゃあ、とりあえず、病院に行こっか!もしかしたら何かあるかもしれないし!!」

「わかった!!それじゃあ、行こうじゃないか!!病院へ!!」

私と名の知れないこの少女はようやく、足を部屋の外へと踏み出した。


私の、わたしの終わったはずの物語。

それは永遠に終わることのない物語。


『こうして物語はまた始まった。』

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