第6話 デート


「そういえば【初デートでサイゼリアンは有りか無しか論争】に、遂に決着がついたらしいですよ」


 俺が頼んだピザの、8分の1を許可なく取っていきながら黒田が言った。別に良いけどさ……


「そうなの?」

「はい。なんでもサイゼリアンの社長が『ウチの店はいつもの食事をする所だからデートには向かないかもね』ってインタビューで答えたらしくて」

「なるほどなぁ。でも、個人的にはチェーン店をデートで禁止されるとキツイな。個人経営の店で美味しいところ知らないからさ……」

「竹中さん、そんなんだからモテないんですよ……そんなんだからモテないんですよ!」

「大事な事だからって2回言わなくて良いよ!自分が一番分かってるわ!」

「おっ、客観視出来てますね」

「あ~あ。彼女欲しいとまでは言わないから、せめてデートしてぇな……」


思わずそう溢すと


「ウチの母も『デートしたい』って言ってたんで、誘ってみたらどうですか?」


と、目の前に座るピザ泥棒に斜め上の提案をされた。


「いや、どういう事?!特殊な提案過ぎるだろ!」

「二人きりが気まずいなら俺もついていきますし」

「それはもう、お前ん家の外出に俺がついて行ってるだけだろ。つーか。そもそも、お前のお母さんがデートに行きたい相手って、お前のお父さんじゃねぇの?」

「俺もそう思って訊いてみたんですけど『あぁ……いや……』って苦笑いされたんで、多分違います」

「息子としては複雑な回答だな……」

「まぁ、こっちも苦笑いですよね」


そう言って黒田は2枚目に手を伸ばしたのだった。


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