第4話 もうすぐクライマックスだってよ


 珍しく、黒田がサングラスを掛けてきた。

 真ん丸のフレームに、薄く青いレンズが入っている。

 サングラスについて触れると「眼病予防です」と返ってきた。


「眼病……」

「はい。テレビで観たんですけど、遠赤外線を浴びると目にダメージが蓄積されるんですって」

「なんで肉をじっくり焼くんだよ。それを言うなら紫外線だろ」

「なんでも、その蓄積されたダメージによって緑内障だか白内障になるかもしれなくて」

「どっちだよ。……まぁ、どっちにしろ嫌だな」

「はい。だから夏の間は、なるべくサングラスしようと思って」

「ふーん。確かに日差しエグいモンな」

「竹中さんも掛けた方が良いですよ」

「そうな~……」


 黒田のサングラスをマジマジと見てると、何だか既視感を感じた。


……誰かに似ている気がする。誰だろう?


 俺の視線に居心地が悪くなったのか、目の男は苦笑いをしながら「なんですか?」と訊いてきた。


「いや……なんか……誰かに似てるなって思って……」

「誰かって?」

「それが思い出せないんだよ。多分漫画のキャラじゃねぇかな……」

「漫画……雑誌で言うと“漫画タイムららら”ですか?」

「萌え系漫画にグラサンのキャラ出てこねーだろ。……多分“ステップ”系?居なかったっけ?そんなサングラス掛けてるキャラ」

「いや~……最近読んでないんで分からないですね……」

「絶対居たと思うんだよな~」

「それより何か頼みません?」

「……それもそうだな」


 諦めて、机にあるメニューに手を掛けると、黒田が「あっ」と声を上げた。


「どうした?」

「いや……このキャラじゃないですか?」


 そう言って、陰陽廻戦とのコラボメニューの表を広げ、その中の人気キャラ・六城を指差した。

 六城は主人公の師匠キャラで、若い頃は青くて丸いサングラスをしている。メニュー表にはその若い頃が描かれていた。


「あ~……これだわ」

「竹中さんには、俺がこんなに格好良く見えてるんですね……」

「んな訳ねーだろ、ボケ。……でも、やっぱサングラスは似てるな」

「そうですか?……そういえば、竹中さんは読んでます?陰陽廻戦」

「いや~……最初の方は読んでたけど……あの漫画、技名とか難しくね?漢字ばっかでさ。覚えきれねーつーか」

「梵字ばっかりよりかは覚え易いんじゃないですか?」

「梵字ばっかりだったらここまで人気になってねーだろうな」

「確かに。大手ファミレスとコラボですもんね……」


 黒田はコラボメニューをジッと見つめ


「折角だし俺、この“冬水のイカ墨パスタ”頼もうかな」


と言った。


そこ六城じゃねぇのかよ


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