第18話 全知全能って怖いよね

「え……?俺の聞き間違いじゃないよね…?」


「はい。聞き間違いではありませんよ?」


え?嘘?そんなヤバいの…?

俺怖いんだけど!なんかいきなりスケールでかくなっちゃったよ!


「その…途中のすべての物語が無くなるってどういうこと…?」


「う〜ん、例えば『世界を救う勇者の物語』の世界と『日本一の不良を目指す物語の世界』の世界があったとしましょう。その『物語』のどれかに『本来の力』を持ったあなたが登場したらその2つの『物語』そのものが破壊されるということです。」


「……え?」


やばい…ますますわからん……。

俺は目で訴える。


(もっとわかりやすく言ってくれ…。)


「そうですね…『本来の力』を持ったあなたは容量が無限のアプリ…という感じですね…。」


「容量が多すぎるアプリ…?」


「あなたがいた世界ではすまーとふぉんというものがありますよね?」


「ああ、確かにあるな…。」


「そのすまーとふぉんの中に容量が無限のアプリがあるという感じでしょうか…。」


ほんとこの人なんでも知ってるな…なんか例えがなんとな〜くわかるようなわからんような…。


「まあ、とにかく俺の力がそれぐらいヤバいってことはわかった……あんたが何が言いたいのかっていうと俺は他の世界にも影響させるほどヤバいってことだな?」


「そんな感じです!」


なんでそんなにきっぱり『そんな感じです!』なんて言えるんだよ…あ、そうだ。


「なあ、全知。」


「はい?」


おそらく。この人なら何か知ってるかもしれない。俺が転生してきたことを知ってるならリリスのことも知っているだろう。


「ずっと気になってたんだけど、あいつがリリスのことって言ってたんだけど…なんかあったのか?」


「……。」


返ってきたのは沈黙。

なんで黙ってるんだ?まさかあいつにそんなヤバいことがあったのか?


そう思っている間に返事がきた




「……いえ。あの子は…………魔王では無いんです。」




「なんだって!?」


は?あいつが魔王じゃない?

なんで魔王じゃないって言えるんだ?

だってあいつは大層に『死と破滅の魔王』とか言われてるんだぞ?



「正確には魔王ではなく、悪魔に取り憑かれた人間なんです。」



「悪魔に取り憑かれた人間…?」


(エクソシストみたいな感じか…?この世界にもあるんだな…悪魔が人間に取り憑くって。)


「まあ、そんな感じでしょう。何故あの子が取り憑かれたのか…知りたいですか?」


全知の声が少し低くなった。

これは相当ヤバい感じだな……。


「…ああ、教えてくれ…。」




-----



「なんで…なんで…僕にそんなひどいことするの…?」


少女は泣いている。

何もしていないのに『魔王』といわれ、人々に恐れられる。

自分は被害者なのに『魔王』といわれる。


「そういうことだったのか…。」


アルミニウスが出した結論、それは


魔王ではなく『悪魔に取り憑かれた人間』だということ


悪魔は人間に取り憑いてその人を乗っ取る。

取り憑く条件などは無く、そして無制限に行うことができる。

たとえ、どんな高貴な人間でも、どんな特別な人間でも耐性が無いものにならできるというかなり厄介な性質をしている。


(つまり、悪魔に人生を狂わされた…ということか。)


まだこんなに12〜14歳程の幼い少女が悪魔に人生を狂わされた…なぜそうなったのかは彼にはまだ分からないが、彼女が今まで体験してきたその辛さはなんとなく想像がつく。


(とにかく何か…何か聞き出さなくては。)


「君は…何故取り憑かれている?」


「わかんない…わかんないよ…なんで…聞いても何も教えてくれないもん…。」


その答えは『わからない』だった。


「誰が憑いている?」


「わかんないっていってるでしょ!僕なんか放ってあっち行ってよ!」


「それはできない!」


そう言って少女の元に歩み寄る。

折られた指はもちろんまだ痛む。

だがそれでも目の前の少女に寄っていく。


「来ないで!あっち行ってよ!」


それを無視して歩み寄る。


「もういいから!一人にして!」


喉が破れるような声を上げられても歩み寄る。

そして遂にすぐ目の前にまで来た。


(私にできることはもうこれしか無い…!)



できることはただ一つ、少女を抱き寄せた。



「え…?」


「私に君を救える力があったら…君に…救いの手を差しのべることができたら…私には…これしかできない…。」


目の前に困っている者がいれば見捨てずに手を差し伸べる。

そうしたいところだが、力が無い彼はこうすることしか出来ない。


(私は…本当に愚かだな…。)


ただ目の前の少女を抱きしめることしかできない。

彼にできることはただそれだけ。

彼女は腕を回した。


「……けて。」



「…ん?」



「助けて…。」



「……。」


腕の中の少女は助けを求めるが、ただ黙ることしかできなかった。



その時、回していた左腕を離し、手の平に針を出現させる。




「できないなら死んでくださ〜い♡」








そういって針を彼の首に突き刺した




と思っていた。




誰かに左手を掴まれる。



「お前、何しようとした?」



掴んでいたのは





確かに殺したはずの者だった。




「……は?なんで…がぁ!!??」


アルミニウスから無理矢理引き剥がし、首を掴んで思い切り横に蹴り飛ばす


大体奴が3kmぐらい吹っ飛ぶ。



「君は……!!??」




「はい…!完全復活パーフェクトガイア様です!」




そんじゃあ、第二ラウンド開始だ……!!

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