第28話 物凄く気が重いです~カーラ視点~

 正直気が重くてたまらない。リリアナ様に相談しようかしら。


 でも、リリアナ様だって、あんな束縛の激しい男の為に、必死に王妃教育を受けていらっしゃるのだ。王妃教育は非常に厳しいと聞く。


 リリアナ様は泣き言一つ言わずに、頑張っていらっしゃるのだ。ただでさえ私は、ろくでなしの兄のせいで、リリアナ様に多大なる迷惑を掛けた。これ以上、リリアナ様に迷惑をかける訳にはいかない。


 それに私は、リリアナ様を今後しっかりお支えしたいのだ。令息と会うくらいで戸惑っていては、リリアナ様を支えられない。


 そうよ、立派な夫人になって、リリアナ様を生涯支えないと!


 ただ、一応リリアナ様にはさらりとカシス様と今度会う事を伝えた。もちろん、リリアナ様にご心配を掛けない様に、カシス様とのお出掛けが楽しみだという旨の内容にした。


 本当は気が重い事この上ない。リリアナ様のお顔を少しでも見られたら、気持ちも少しは落ち着くかもしれない。


 でも、お出掛けは明後日なのよね…次リリアナ様のお屋敷にお邪魔するのは、4日後なのだ。リリアナ様の負担にならない様に、週1回だけ早朝、リリアナ様のお屋敷にお邪魔して、1時間だけお時間をもらっているのだ。


 4日後にはきっと、カシス様の話題が出るだろうから、リリアナ様に安心してもらえるような結果を出さないと。


 それにしても、気が重いわ…


 翌日

「カーラ、明日のカシス様のデートは、このドレスを着て行きなさい。カシス様の瞳の色をイメージして、グリーンにしたわ。どう?素敵でしょう?」


「ええ、とても素敵なドレスですわ。街に出るには、比較的動きやすそうなドレスですね」


 お母様がとても素敵なドレスを準備してくれていたのは有難いが、やはり私の心は重い。そもそもカシス様は、こんな私と一緒にお出掛けをして、嫌ではないのかしら?途中でもしカシス様を怒らせてしまったら、どうしましょう。


 私と友達でいてくれているリリアナ様の評判を、落とすことにならないかしら?なんだかどんどん不安になって来た。


 完全に動揺してしまった私は、心配すぎて食事も喉を通らない。私は本当にダメね。リリアナ様の為に、頑張ると決めたのに。


 ついため息が出てしまった。


 その時だった、メイドが私の傍にやって来たのだ。


「お嬢様、リリアナ様がお見えになっております。客間でお待ちですわ」


「リリアナ様が?わかったわ、すぐに行くわ」


 こんな時間に、一体どうされたのかしら?もしかして、何かあったのかしら?リリアナ様の事が心配で、急いで客間へと向かった。


「リリアナ様、一体どうされたのですか?」


「カーラ、急に押しかけてごめんなさい。あなた、明日カシス様と初めてのデートでしょう?カーラはお兄様のせいで、令息が未だに苦手だから、心配で様子を見に来たの。もし2人で街に出るのが嫌なら、私も一緒に付いていくわ。あなたが心配なの」


 私の事を心配して、わざわざ我が家に来てくれたの?手紙にも心配させない様に、気丈に振舞っていたし、お茶会や夜会でも、令息が苦手な素振りを見せない様にしていたのに…


「どうして私が、令息が苦手な事を?極力その様な素振りを見せない様にしていたのに…」


「私はあなたの友人なのよ。あなた、令息とお話をするとき、かすかに震えていたでしょう?よく考えたら、あなたが令息に苦手意識をもっているのは当然よね。あれほどまでに、お兄様から酷い事をされていたのですから」


 リリアナ様は、いつも私の事を見て下さっていたのね。それが嬉しくてたまらない。なんだかリリアナ様の顔を見たら、元気が出てきた。


「リリアナ様、ご心配をおかけしてごめんなさい。確かに私は令息が苦手です。でも、今日リリアナ様とお会いできて、なんだか勇気が湧いてきましたわ。私、明日頑張ってカシス様に会って参ります。でも、もしうまくいかなかったら…」


「上手くいかなかったのなら、それまでよ。令息はカシス様だけではないのだから。きっとカーラには、カーラに合う素敵な方が現れるわ。それにもう、あなたは1人じゃないのだから。もし何か嫌な事があったら、私に話して頂戴。私がカシス様に、抗議をしに行くから」


「そんな、リリアナ様にその様な負担は…」


「あら、私達は友人なのよ。カーラはいつも私を守る事ばかり言うけれど、私だってカーラを守りたいわ」


 そう言って笑ったリリアナ様。この人は、どこまで素敵な方なのだろう。私の為に、ここまでして下さるだなんて…


「とにかく、カーラが無理だと思ったら、すぐに戻って来てもいいのだからね。気楽に行けばいいの。私はどんなことがあっても、あなたの味方だから」


「ありがとうございます、リリアナ様。私、明日のお出掛けを精一杯務めさせていただきますわ!」


「だから、そんなに張り切らなくてもいいのだって」



 そう言ってリリアナ様が笑ったのだ。なぜだろう、リリアナ様に会った事で、心が穏やかになっていく。リリアナ様は、本当にすごい方だ。彼女の為にも、明日のお出掛けは成功させないと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る