紀して洩れる想いの終着点

紀洩乃 新茶

獣道

目の前に広がる現実という名の雑木林の前で立ちすくむ君……。


その雑木林は見上げるほどに高く、見渡しても終わりがない。


草木で覆われた壁に入り口を探してみるが、僅かな隙間を見つけるに留まる。


しかし、君は進まなければならない。


意を決した君は、草木で出来た壁をその手で掻き分け中に入っていく。


見渡す限りの暗がりの中、押しのけた木の枝が体中に当たり痛む。


その木の枝は、人の悪意のようなものだ……。


無視していれば気にもならないのに、触れれば痛みを伴う。


しかし、それでも君は進まなければならない。


押しのけた木の枝が反動で自分の顔を傷つけようとも、一歩……また一歩と。


気が付けば頭上から木漏れ日が射しこんでいた。


その温かな光は、進むべき道を照らし見守ってくれる人の優しさだ。


君は光に導かれるように草木を丁寧に避けては、足元を踏み固め進んでいく。


進むうちに木の枝で痛みを受けないように、枝を折っては捨てる……。


人の悪意を自らの意思で振り払うかのように……。


振り返った君が見たものは、歪ながらも人が道と呼ぶそれだった。


そんな時に見つけた誰かが進んだであろう歪な道の後。


その道を行くことを決めた君は、進む速度が上がっていく。


はやる気持ちを抑えながら、一歩……また一歩と丁寧に整地しながら。


その先にあるであろう未来という名の目的地は未だに見えてこない。


それでも君は進むしかない、その先に行くと決めたのだから。


しかし、君が進んだ後に残る道には確かにあるんだ……





君が歩んできた軌跡が繋いだ、獣道という名の生きた証が。



 

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