あの日の君は

@coooooooo

第1章

第1話 




「あなたの父と母は交通事故で死んだ。だからあなたは1人で暮らして行かないといけない。金銭面の心配はいらない、2人とも保険に入っていたからこの金であなたが働くまでは不自由なく生活できる。」


こんなことを言ったのが女性だったか男性だったか年齢はいくつぐらいか...

そんなことはもう覚えてはいない。


ただ一つ覚えてるのはあの時の損失感だけだった。




私の家族は貧乏でも金持ちでもなく、ごく普通だっただろう。

しかしその普通が壊れた、いや誰かに壊されたのは小学5年生の冬だった。




雪がよく降ったある日、私はいつも通り意味のあるかのわからない国語やら算数やらの授業を適当に聞き流していた。

私は今考えると小学生の頃から社会の大半を理解していたと思う。

小学生ながらに周りの人間はガキだと思っていた。

我ながら厨二っぽいことを考えてる。

しかし勉強も運動もなんでもできた私には学校というものはつまらなかった。

そんなことを考えながら普通の毎日を過ごして生きてくんだろうと思ってた。

教室の窓から外を見ると黒い車が止まり黒いスーツを着た数人が車から出てきて学校に入ってくるのを見た。


それから数分後に


「5年4組一ノ瀬彼方さんは至急職員室まできてください」

という放送がされた。そして私は職員室に向かった。


職員室の前に黒スーツの数人が言った


「あなたの父と母は交通事故で死んだ。だからあなたは1人で暮らして行かないといけない。金銭面の心配はいらない、2人とも保険に入っていたからこの金であなたが働くまでは不自由なく生活できる。」




そこからは記憶がない。どうやって家に帰ったのか、葬儀はどうなったのか、父と母は本当に死んだのか....





記憶があるのは父と母の死を告げられた何日後かした雪がたくさん積もった日の夜中だ。


あの日は近所の公園にいた


何も考えず死のうと思った


どうせ人間はこの寒さの中にいれば死ねると思い目を閉じた



しかしそれは叶わなかった


「ねぇあなた死にたいの?なんで?」


目を開けると自分より数個年上の女の子が立っていた。

そしてその女の子はとても綺麗だった。

小学生もしくは中学生に綺麗なんて言葉は意味がわからないと思われるかもしれない。



しかし彼女は綺麗だった。




「父と母が死んだ。だから自分も死のうと思った」


「そーなんだ。大変だったんだね。けど死ぬのはもう少し考えてからの方がいいと思うよ。今まで親のために生きてきたから、誰かのために生きてきてその誰かが死んだから死ぬのかもだけど、その誰かがもういないなら自分のために生きてみなよ。大切な誰かが現れるまで。」




そんな意味のわからない事を言って彼女らどこかへ行った。


しかし、あの時からだろう、自分のために生きようと思ったのは。



そしてまだ子供だった私の心はあの人に掴まれていたのは。



そう、あの日。雪が降った日。




私は名前も年齢も出身も知らない女性に恋をした。




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