ファイル.02 神隠しの村に巣食う大蛇と二人の姉妹(9)
「まりえさん、元に戻ったのね。本当によかったです」
サキが泣きながらまりえの身体に抱きついた。
『さて、俺もこいつをいただくとするか……』
九十九がゼロを身体に出現させると、ゼロは姦姦蛇螺の下半身を捕食し始めた。
『ふふ、今回の怪異もなかなかの上物だったな。とても美味かったよ、うみか。おかげで俺の身体も大分再生出来た』
『良かったなゼロ。私たちが元に戻れる日が少しだけ近づいたな』
『ああ、そのためにも、もっともっと怪異を食べて、力を取り戻さないとな』
◇◇◇
「ここは……」
まりえが目を覚ました。
「大丈夫か、まりえ」
「ええ、なんとか。うみちゃん、あなたが助け出してくれたのね。本当にありがとう」
「怪異とは切り離したけど、完全とはいかなかった。まだ少しだけ君の身体の中に怪異が交じっているが、許してくれ」
「大丈夫よ。おかげであいつの中にいた妹にも会うことができたから。今もわたしの中に、少しだけ妹のユキを感じることが出来るの。本当にありがとうね」
「とりあえず、私の上着を着ておいてくれ。そのままの姿で村に戻るわけにはいかないからね。森の入口に近づいたら、サキに着替えをとってきてもらうよ」
「あ……私、裸だったの!?」
まりえは自分が服を着ていなかったことに気づいていなかったようで、顔を真っ赤にしながら九十九の白い上着を羽織った。
森の奥から村の方へと歩いている途中、まりえは二人にまだ話していない彼女の秘密を話した。
まりえは、この村の出身だった。
そしてまりえには、三歳年下の妹のユキがいた。
しかし、生まれつき、ユキは目に障害を持っていた。
そのため、ユキは村人たちから生贄として選ばれた。
後年、そのことを知ったまりえは、妹を救えなかった自責の念から、村から離れた。
そして、怪異による事件を取材しながら、ずっと妹の復讐の機会を伺っていたのだ。
「ごめんなさいね。本当のことを言えなくて……。あなたたちを巻き込んでしまって……」
まりえはうつむきながら、泣き出してしまった。
「気にするなよまりえ。こうしてなんとか帰還できたんだから、いいじゃないか」
九十九は、後ろからまりえの肩に手を回して慰めた。
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