※ 第6話 服従


「ん……」



いけない、少し寝ちゃってた。

リビングに出ると段ボールは片付けられていて、何やら食欲を唆る匂いが漂っている。


キッチンに目を向けると、荷解きを終えた麗華が夕食作りをしていた。

という事は結構寝ちゃってたのかな。私は鍋を掻き回している麗華に声をかける。



「影」


「あ、麗華様! 今お夕食の準備を……」


「それは良いんだけどさ。何で服着てるの?」


「え……?」


「着て良いって許可出してないよね?」


「そ、それは……シチューを作ろうと思って、火を使うので……っ」


「脱げ」


「ですがっ」



尚も反抗する麗華。

私はスマホを操作して、中の玩具を作動させた。

麗華の下腹部から僅かにモーター音が鳴り、麗華がびくりと身体を震わせる。



「ひあぅ……っ!?」


「影の分際でご主人様の言いつけに背くなんて良い度胸してるね?」


「も、申し訳ありませ……っ」


「謝らなくて良いから脱げ」


「は、はい……」



麗華が服を脱いでいく。首輪と股間の貞操帯を除いて生まれたままの姿になる。

私はそんな麗華に近づき、後ろから胸を揉みしだいた。

快楽ではなく、ただただ痛みを与える為に。



「いぎっ!? い、痛いです麗華様!」


「うるさい」


「あ、あぁ……っ」



突起を抓ると更に麗華が痛がる。私はそのまま胸を揉みしだき続けた。



「麗華様、お許しください! もう逆らいませんから……っ!」


「……本当に?」


「神に誓って!」


「……じゃあ許してあげる」



私は胸から手を離すと、麗華はぺたんと座り混んで自身を抱き締める。

あぁ、玩具は動いたままだった。スイッチも切って夕食作りの続きを促した。



「はっ、はい! 只今お持ち致しますっ!」



麗華は立ち上がり、夕食作りを再開させた。

既に完成間近だったのか、少ししたらテーブルに食事が並べられていく。



「こ、こちらです……」


「ふぅん?」



見た目は美味しそう。料理の経験は皆無に近いだろうけど、麗華も馬鹿ではないからレシピがあればそうそう失敗はしないだろう。



「ん、何してるの?」


「え? わ、私も頂こうかと……」


「影が食べる場所はそこじゃないよね?」


「……はい」



麗華はゴト、とシチューの入った深皿を床に置いた。

それだけなのに随分悔しそうだ。生意気。



「手伝ってあげる」


「へ……?」



私は床に置かれた深皿を持ち上げて、中身を床にぶちまけた。

少し麗華にも掛かって熱がってるけど、それよりも驚きの感情の方が大きいように見える。



「れ、麗華様?」


「それ、食べな。奴隷が食器なんて贅沢品簡単に使えると思う?」


「そ、そんな……」


「何? また罰を受けたいの?」


「っ……わ、分かりました……」



麗華は四つん這いになり、床にぶちまけたシチューを舌で舐め始めた。

そんな麗華にスマホを向けて動画を撮影する。

後でこの動画をネットに流せば良い感じにバズるかな。

……いや、流石に危険か。


さて、私も食べよう。



「うん、美味しいよ」


「あ、ありがとうございます……」



麗華は涙と鼻水を垂らしながらシチューを犬食いする。

その無様な姿を見て、少し気分が晴れた。



「影、ちょっとでも残したらお仕置きだから」


「は、はい……」



麗華は床に顔を近付けて、ぴちゃぴちゃと舌でシチューを舐め取っていく。

そんな姿にまた少し気分が晴れた。


食事を終えた後、私はリビングのソファーでくつろぐ。

麗華は床にへたり込んでいて、時折『うっ……うぅ……』と呻いていた。

玩具を動かして、だけどテレビを見るから声を出す事を禁止したからだ。


その時、部屋に電子音が流れた後『お風呂が沸きました』と無機質な声が聞こえた。



「影、お風呂沸いたってさ」


「は、はい……」


「背中流して」


「かしこまりました……」



浴室に向かい服を脱ぐ。

麗華は変わらず首輪と貞操帯のみだからそのまま後をついて来る。



「洗って」


「はい……」



まずは頭。爪は立てない、という最低限のマナーは知っているらしい。

髪を濯いだら次は身体。



「失礼します」


「手で洗って」


「はい……?」


「聞こえなかった?」


「い、いえ……!」



指示通りボディスポンジは使わずに手で私の身体を洗い始める麗華。

当然の事ながら手つきは慣れていないし、所々爪が当たって痛い。



「影、もっと丁寧に」


「……はい」



麗華の指の動きが少し変わった。どうやら学習したらしい。

人間、追い詰められると必死に覚えるらしい。

お仕置きの口実がなくなってつまらないな……



「ま、前を失礼します」


「うん」



まずは首元。そこから肩や胸元、下の部分と洗っていく。

丁寧にやれば案外気持ち良いものだ。

最後に温いシャワーで泡を流されて終了。

湯船に浸かりながら麗華に告げる。



「中々良かったよ。ご褒美としてこのままお風呂場で洗わせてあげる。お湯も使って良いよ」


「あ、ありがとうございますっ」



麗華は慌てた様子で自分の洗体を始めた。

その様はお風呂の使用許可を得て本当に喜んでいるように見える。


……油断したら駄目だ。

あの従順さはきっと演技だ。プライドが高く、賢い麗華が簡単に折れる訳がない。

けれど、あれから徹底して従順でいるのも事実。

今回は無防備な姿を見せてどんな反応をするか観察する為の入浴でもあったけど……反抗する素振りは無かった。


……まぁ、演技かどうかを見抜く術なんて私には無い。

どうせやる事は変わらないんだ。

現段階で服従してようがしてまいが、徹底的に辱め、責め立てて屈服させる……それだけ。



※※※※※



入浴後の諸々を終えて就寝時間。

麗華を壁際に手招きする。



「どうされましたか?」


「これ、差して」



差し出したのは一本のコンセント。

訳が分からない、という表情をする麗華の貞操帯をコツコツと叩きながら口を開く。



「コレだよコレ。中の玩具は充電式だからね。

寝る時は必ず差して寝る事。ほら、やって」


「はい……」



見えない位置だからか少し戸惑いつつも、どうにかコンセントを差せたようだ。



「あはは、無様だね?」


「うぅ……」



股座から一本の線が伸びている姿は中々に間抜けだ。

そこを揶揄すると麗華は一丁前に顔を赤らめる。



「このアプリで残量が分かるから、朝起きた時に100%じゃなかったらお仕置きだから。

あと勝手に外すのも駄目。こっちはすぐに分かるから、後で差し直しても無駄だよ」


「はい……」


「じゃあ私は寝るから。お休み」


「あ、あの……私の布団は?」


「持ってくれば? あぁ、でもコンセント外したらお仕置きするよ」


「その、ではどうやって……」


「そんなの知らないよ。コンセントを差す前に寝具を持って来なかった影が悪いんじゃん?」


「……その通りで、ございます」


「うん、分かってるなら良いんだ。お休み」


「お休みなさいませ」



ひらひらと手を振る私に麗華は深々と頭を下げる。

だけど私は見逃さなかった。

頭を下げる直前……唇を噛み締めて、恥辱と屈辱に歪んだその顔を。

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