消えたベストセラー作家

消えた作家と未完の物語

静岡の静かな海を見下ろす崖の上、古民家を改装した書斎で、長田幸助は焦燥感に駆られていた。彼の親友であり、才能豊かな作家、清原康太が突如失踪したのだ。そして、清原の最新作の原稿も、彼と共に姿を消していた。

清原は、デビュー以来、数々の傑作を生み出し、読者から絶大な支持を集めていた。彼の作品は、静岡の美しい自然を背景に、人間の心の奥底を描き出すもので、長田自身も彼の才能に魅了されていた。

警察に捜索を依頼するも、有力な手がかりは見つからない。長田は、清原の失踪には何か裏があるのではないかと疑い始める。彼は、清原の書斎を徹底的に調べた。すると、書斎の奥の壁に、奇妙な記号が刻まれていることに気がついた。

長田は、その記号の意味を解読するために、古文書や神秘学の書物を読みあさる。そして、ある日、その記号が、地元の古老から伝わる伝説の物語と関係があることを突き止める。

伝説によると、この地域には、作家を魅了し、同時に破滅へと導くという「幻の物語」が存在するという。その物語を完成させた者は、永遠の命を得る代わりに、この世から姿を消さなければならないという。

長田は、清原の失踪とこの伝説が関係しているのではないかと考え始める。そして、彼は、清原の過去の作品を改めて読み返す中で、あることに気がつく。彼の作品の中には、常に、この伝説に似たモチーフが繰り返し登場していたのだ。

長田は、清原が、この「幻の物語」を完成させようとしていたのではないかと推測する。そして、彼は、清原の足跡を辿りながら、静岡の各地を彷徨い始める。

やがて、長田は、清原が最後の執筆活動をしていたと思われる海岸にたどり着く。そこには、未完の原稿が埋められていた。長田は、その原稿を読みながら、清原の心の内を探っていく。

そして、彼は、清原がなぜ失踪したのか、そして、彼が何を求めていたのかを理解する。清原は、単に名声を求めていたのではなく、永遠の命と引き換えに、真の芸術作品を作り上げようとしていたのだ。

長田は、清原の願いを叶えることはできないと悟る。しかし、彼は、清原の未完の物語を世に広めることで、彼の魂に報いたいと決意する。

長田は、清原の原稿を元に、物語を完成させた。そして、それを出版した。清原の最後の作品は、多くの読者の心を揺さぶり、大きな反響を呼ぶ。

静岡の海を見下ろす崖の上、長田は、清原の面影を偲びながら、静かに海を見つめていた。彼は、清原の魂が、永遠の物語の中に生き続けていることを確信していた。