愛せよ古物

ゆでたま男

第1話

「あんた、またガラクタ買ってきて」

「いいじゃないか」

男は、骨董品を集めるのが趣味だった。

だがそれは、妻からすれば、たんなるガラクタでしかない。

男は壺をしげしげ眺めた。

「お前には分からないんだ。これは価値の高い壺なんだ」

「それが何の役に立つのよ。あんたと一緒で何の役にも立たないじゃない」

男は、壺を持つと、階段を下りていった。

そこは地下室で、今まで集めた骨董品の数々が置いてある。

「いいんだ。俺にはコイツらがいる」

男の幸せそうに、それらを愛でるのだった。

すると、何やら地震のような揺れが襲ってきた。

「あぁ、なんてことだ。大切なコレクションが」


ある国の重要な人物達が集まっていた。

「どうします、大統領」

「うむ、やむ終えまい。最終手段を使うしかない」


また、ある別の国でも、重要な人物達が集まっていた。

「大統領、このままだと、この国は負けてしまいます」

「そうだな、もはや、使うしかあるまい」


解き放たれた禁断の最終兵器によって。世界は火の海となった。


1万年の時が過ぎた。

人類は滅びたかのように思われたが、わずかに生き残った中から交配をし、形を変えつつ再び文明を発達させたのだった。


とある学会。

「ご覧ください。これが我々の先祖です」

発掘された骨がスクリーンに写し出された。

たまたま、開発のため、地下を掘っていたところ、小さな空間があり、発見された。

「無傷で全身の骨格が見つかるのは珍しい。我々の先祖がどんな暮らしをしていたのか探る、新たな手がかりになる。これは、貴重な発見です。大変な価値があります」

その骨は大切そうに壺を抱えて横たわっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛せよ古物 ゆでたま男 @real_thing1123

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る