クラスメイトが理不尽に振られる場面を目撃した俺、慰めたらすごく懐かれた。〜〜なお、振った彼は後悔しているがもう遅い。彼女は俺の横で幸せにするので〜〜

第1話

 俺、杉田すぎた まもるは高校1年生だ。どこにでもいるような、ごく平凡な男子高校生。だから、本当ならこんなことは柄じゃないんだけどな……。


 「ねぇ!あなたもひどいと思うよね!えっと…杉、杉、…杉並すぎなみ君!!」

 「…杉田です」

 「ご、ごめんなさい、杉田君」


 俺にそう話しかけてくるのは新妻にいづま 里恵りえさん。普段から少しつり目の彼女は、いつにも増して目をつり上げていた。


 「…んだよ、気に入らねえことでもあんのかよ」


 そう面倒くさそうに話したのは葛原くずはら 和哉かずやさん。サッカー部の期待の新人であり、新妻さんの彼氏である。


 「…気に入らないことがあるのか、ですって?大アリに決まってるじゃない!!なんで、なんで私がいるのに他の人とラ……浮気なんてするのよ!!」

 「お前に魅力がないからだろ?そのくせ、ヤらせてもくれねぇし」

 「なっ!?」

 「はっ!?」


 その発言には俺もかなり驚いた。さも当然だというように、あまつさえ新妻さんの方に問題があるかのように言い放った言葉は余りにも身勝手だった。


 「もういいか?俺は帰るわ」


 開いた口が塞がらない俺たちを横目に葛原は帰っていった。


 「…どうして、こんなことになっちゃったんだろう?私が、よくなかったのかな?」


 そう呟く新妻さんの瞳には何も映っていなかった。まだ涙を流してくれたりした方が慰めやすかったのに、と何もない虚空をじっと見る新妻さんの姿を見て思い知った。


 俺がどうしてこんな気分の悪くなるような状況にいるのか、それはほんの数分前に遡る。


〜〜〜〜〜


 俺は今、学校の図書館にいる。静かな場所で短時間に集中して勉強するのが一番だと思っている俺は、中学のときから宿題を図書館でやるようにしている。家族仲が悪くて家に居ずらい、なんて理由は特にない。


 そんなこんなで今日もいつも通りに宿題をしていたタイミングで教科書を忘れていたことに気がついた。それ自体は月に1〜2回はあることだけど、今日はまだ教室に残ってる人影があった。もう帰りのHRホームルームが終わって1時間近く経ってるのにどうしたんだろうと一瞬思ったが、特に問題ないと勝手に教室に入った。…それを後悔するのは、わりと早かった。


 「ねぇ、これはどういうことなの!!」

 「…はぁ、どうって?」

 「だから!!……って、ダレ!?」


 教室に入るとすぐに彼女、新妻さんに見つかった。それから、半ば強制的に彼らの会話に参加させられた。…俺は教科書を取りに来ただけなのに。

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