【完結】世界の裏側

黒蓬

第1話 敗北

彼らは優秀な冒険者達だった。

迫りくる魔物達をものともせず効率的に対処していた。

補助魔法で強化し、防御魔法で相手の攻撃を防ぎ攻撃魔法で相手の前衛を殲滅し、近接部隊が残りの敵を殲滅する。完璧と言っても良いほどの連携を見せ、圧倒的な物量差をものともせずに殲滅していった。

そうしてその物量差もひっくり返り、戦いは彼らの勝利で終わろうとした時、

突如見たこともないような巨大な影が彼らの背後に出現した。


「な、なんだこいつは?さっきまでこんなやつどこにも・・・」

「転移魔法か隠蔽魔法か?いやだがどちらにしてもこんな巨大な魔物を対象にしたら、どれだけの魔力が必要になるか・・・」

「落ち着け!今は目の前の敵だ。来るぞ、体勢を立て直せ!」


未知の魔物の突然の出現。さすがの冒険者たちにも動揺が走るがそれでも彼らは優秀だった。リーダーの指示のもと巨大な敵に向け陣形を組み直し可能な限り効果的に対処した。

すなわち補助魔法による最大強化、攻撃魔法と近接部隊による時間差での全力攻撃。たとえ未知の強敵とはいえ1体だ。これだけの攻撃を受ければ一溜りもないだろう。と誰もが思っていた。

だが、そこには依然として巨大な敵が立ち塞がっていた。

魔法も近接部隊によるスキルも確かに効いていた。だが、その傷は信じられないような速度で再生されていた。


「ばかな!?何だあの再生速度は!?」


流石の彼らでも、これには動揺を隠せなかった。その同様収まらぬうちに敵が動いた。ゆっくりとその巨大な腕を振り上げ、彼らに向けて振り下ろしたのだ。

単純な質量による叩きつけ。後方部隊の冒険者のほとんどは回避できなかった。回避しようとしてもその攻撃範囲から逃れられなかったのだ。

ゆっくりと見えたその動作も、そのあまりの巨大さ故に見誤っただけなのだ。

それに気づいた者たちはできうる限りの防御魔法で防ごうとした。だがそれもまた無駄になった。

その巨大な腕は防御魔法を一瞬で破壊し、そのまま彼らに叩きつけられた。

その後は悲惨な光景だった。連携など取れるはずもなく、無謀にも突撃するものか敗北を悟り逃走を図るものの2択に分かれた。逃走を図った一部の者達だけは生き残ったが、それ以外の者達は全滅し、この戦いは冒険者たちの敗北で幕を閉じることになった。


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