おひとりぼっち

イタチ

第1話

おひとりぼっち



スーパーまで、自転車で、三十分

真夏の熱気は、帰宅ラッシュの夕暮れ時でも、さして、変わりなく

太陽は、未練がましく、人間のオゾン破壊を、あがなわせようとするかのように

その光の手を、温度に変えて、空から、暑さを、送り込んでいる

私は、命からがら、逃げ込むように、ゴンドウタマデと言うスーパーの自動ドアを、滑り込むように

入り込んだ

その手には、入口の消毒液を、散布した後、カゴが握られており、緑色のその中に、私は、今日買うべき、食材を、入れていく

カートを、ひくのは、土日、父親が、車を、出してくれる時で、それ以外は、そこまで重い物を、買う事のないようにしている

自転車の荷台は、強化されており

自称、五十キロは、大丈夫だ

と、板金屋のおっちゃんが、言っていたが

それ以外の自転車の部位が、大丈夫かは、私には、判別が、つかなかった

少なくとも、今日、いままでは、今までのところ、異常はなく、大丈夫ではある

私は、乾きもののスパイス調味料の棚の角を曲がり、大豆類の豆腐、揚げ物類が立ち並べられているコーナーへと、向かうとするとき

視界に、同じ方向へと、向かう人の動きがあった

それは一瞬にして、コーナーに、消えてしまったので、見間違いの可能性も、無くはないのだろうが

私は、その姿に、見惚れてしまっていた

ほっそりとした腕は、木の枝の様で、その足のスラリとした体系も、ビジュアル系のモデルのようであった

流れる後ろ髪も、直ぐに隠れてしまったが

こんな田舎で、しかも、私たちと同い年くらいだと、思うのであるが

それは、金ともう一色、緑や紫が、入って居たように思う

少なくとも、この地域で、そんな髪の色を、した人間など聞いたことも、見たことは、もちろんない

あれば、即刻退学だろう

しかし、それほどの奇抜な色であっても、それは、堂々と、まるで、それが、普通とでも言うように

歩いて行った姿を見ると、旅行者の人かも知れない

私は、もう一度、確かめたくて、その角を、小走りに曲がる

雪のように、白い肌

全てを、見透かすような、際立ったまつ毛の下の大きな瞳

リップも、何か塗って居るのだろう

大人し目だが、濡れたように、光って居る

何だ、この人は

耳は、紙に隠れているが、銀色の光る点が、ゆらりと、見える

ピアスだ

ピアスだ

私は、二度ほど、つぶやいた

雑誌や、ヤンキーの美容院なら、見たことはあるが

こんな子は、見た事が無い

それにしても、外国の人だろうか

見も知らないこの国のスーパーでの買い物

高騰物価の世の中でも、きっと、生活の一コマでしかなくても、面白いのであろう

そう私は、すらりとした、細い首を、見ながら

そう思った

きっと彼女なら、何を着ても、美しくなるだろう

いくら私が、この学校で、美しさを、追求しようとしても、何か、絶対勝てないもの

それは、地の問題か、それとも、外国のメイク技術か

「ねえ、タロウさん、今日は、四川風麻婆豆腐に、しましょう、私、花山椒持ってきますから、好きなお豆腐、お願いしますね」

てっきり、英語を、話すと、思ったら、勘違いだったらしいく

彼女の口からは、流ちょうな、私が話しているような、日本語が聞こえた

「僕は、普通の山椒が、好きだよ」

その時私は、気が付いたが、彼女の陰で、誰か、別の人間が、何かを買っているようであったが

とても彼女とは、関係ない

この世とは、別のモブと、そう考えていた

片割れの名もあるのだろうが、燃やされるだけの刈られた雑草が、事もあろうことか、彼女と、口を利いていた

更に

「まあ、僕は、どちらでもいいけど、あなたの好きにしたら良い」

なに、偉そうに、彼女に、そんな口を、利いているのだろう

私は、憤慨のあまり

彼女が去ろうとする

その向こうの声の男が、どのくらいの美形か、確認してやろうと思った

まあ、男に、かっこよさを、求めるだけ、無駄である

あれは、顔よりも、耐久性の方が、問題点であるが

私は、社会の荒波を、越えても、いけるような、紳士を、見ようとしたが

そこには、彼女が、美麗の美しいスリムさだとしたら

枯れ枝を刺したマッシュルームヘアーのピノキオみたいな細身の男がいた

タロウ

私はそこで、その名前を、反芻する

山田太郎みたいな、一歩間違えば、さむざむしい皆殺し作家のような名前になりそうな

案山子みたいな名前だが

そう言えば、うちのクラスに、タロウと言う名前を聞いたこともある

制服でなかったので、気が付かなかったが

その服に、着せられているような、茶色がかったクリーム色のズボン

腕の隠れている長シャツ

子供服売り場のマネキンを、少し大きくしたようなひょろ長いのが、そこにいた

私よりも、頭一つ低い

目線の高さから言って、165㎝くらいであろうか

一体、どういう関係であろう

友達、親戚・・・まさか

苗字はたしか

「タロウ、見つけた」

彼女は、いつの間にか、向こうの角から現れ

反対側の牛乳等が並べられた乳製品の山脈を見ている横を、腕を、ひっつかむように、向こうの方へと、消えていった

私は、何を、隠れているんだと、自分で、疑問に、思いながら

考えていた

ナニタロウだっけ



家に帰り、学生名簿を、引っ張り出していた

今年の春に、渡されたものが、残されていた

タロウタロウタロウ

自分でも一体何をしているのか、分からなくなり始めていたが

私は、タロウの名前を、見つけていた

「あっあれ」

しかし、何という事であろう

その場所からは、雑に扱ってしまっていたのであろう

コピー用紙が、敗れ、半分肝心の場所が、見えなくなっていた

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