変化
「ただいま~」
「おかえり!」
「おかえりママ~!」
急に甘えん坊になってしまったポタンが帰宅したミリャナに飛びつく。
「あらあら、ポタンどうしたの?今日はいつもに増して甘えん坊ね何かあったの?」
「パパがお馬鹿だった」
「?」
圧倒的にポタンの言葉が足りないので元気が補足する。
「今日さヴァイド様が来て話しをしたんだ」
「え!?叔父様が!?大丈夫だったの!?ちゃんと挨拶は出来たかしら!?失礼な事は言わなかった!?」
「だ、大丈夫だったよ、叔父上も気を使わないで良いって言ってくれたし」
「お、叔父上?そ、そう?それなら良けれど……本当に大丈夫だったの?」
やれやれまったくミリャナ優し過ぎるんじゃないか?俺の心配をこんなにしてくれるなんて、これはミリャナの心配を俺が本気でしなければいけない。などと元気が考えていると再度、ポタンがパパがお馬鹿だったと言った。
「パパがお馬鹿なのはわかったから、何があったのかしら?」
「パパが町の傭兵団を作るって言ってた」
ポタンが急にお馬鹿になってしまった。
「よ、傭兵団ってどういう事?元ちゃん!」
「えっと、長くなるかもだからご飯食べながら話すよミリャナもお腹すいたろ?」
「ポタン、パパが嘘をついたりしたら教えてね!」
「うん!ママ!」
あっれれ~?信用がないぞ~?と思いながら元気は夕食の準備を始める。
そしてポタンフィーバータイムも終了した。
そして夕食の準備をしていると、ミールとフェルミナが喧嘩しながら帰って来る。
「フェルミナが原因なんだから、お前が言えよ!」
「何だと!?ミール!貴様も原因の一端だろ逃げようとするなよ卑怯者め!」
「もう!二人とも喧嘩ばかりして!家の中では静かになさい!」
「す、すまぬミリャナ。お、おかえり!」
「ね、姉さん、おかえり!お前のせいで怒られたじゃないか!」
「私だけのせいにするな!」
「こら!二人とも!」
「ご、ごめんなさい!」
ミリャナとフェルミナとミールでお母さんとできの悪い弟妹の図が完成していた。
勿論、お母さんはミリャナだ。
「二人とも、手を洗えよ一日外にいたんだからな」
「うむ、そうだな」
「あぁ~疲れた~!」
全員が席に座るといただきますを言ってから食事が始まる。
さっきまで騒がしかった二人も、よほどお腹が空いていたのか黙々と食事をしている。
「それで、元ちゃん昼間何があったの?」
「今日さ叔父上が来たんだ、損害賠償とかの話しをしに……」
それからヴァイドと話した顛末を粗方話す。
「賠償金と防壁の件はわかったわ、でも傭兵団って……心配だわ……」
「フフン、心配しなくても良いぞミリャナ!我々エルフも元気に協力するからな!」
「僕も勿論姉さんを護るさ!」
「あ、あなた達」
申し出は有り難いが、今では無い。
俺の有り難みが減るでは無いか!と間が悪い二人に元気はそう言いたくなった。
「まぁ防衛の前線に行はいかないからさ、安心してよ」
「でも……」
「ママのパパとママの時の様にはしない。ってお爺様言ってたよ」
「お、お爺様?そ、そう……心配ではあるけれど、叔父様もそう言って下さっているのなら……それにしても二人とも叔父様と仲良くなったのね?嬉しいわ」
「あぁ、いい人だったよ」
「パパはお馬鹿です。ママとわたしを護るついでに町を護る。って言ってました」
「あらあら?そうなの?フフフ、お馬鹿さんですね~パパは」
「ねぇ、俺が馬鹿なのはわかったからさ、そんなに馬鹿馬鹿言わないで貰える?そろそろ泣いちゃうよ?」
それを見てミリャナとポタンが見合って微笑み合う。
あぁ、何て幸せな光景なんだ。あの中間へ入って行って、右目はポタンと、左目はミリャナと見つめ合って、一緒に微笑み合いたい。と元気は幸せな妄想をする。
「あぁ~はいはい。イチャつくのは皆がいなくなってからにして貰えませんかねぇ~!」
「私は構わんぞ!好き合う同士がイチャイチャするのは、見ていて歯痒いが悪くは無い!なので存分にイチャイチャするが良い!」
幸せな妄想を邪魔する輩が二人ほどいた。
ミリャナが真っ赤になり俯いてしまう。
そしてポタンが元気を睨む。ポタンはミリャナに対する元気への嫉妬心が凄いのだ。
元気はポタンに二人を睨んでいただきたいと思った。
「ところで、二人はさっき何を騒いでいたんだ?」
「え?」
二人が揃って反応した。
こんな時は問題事が起きた時だ。
今度は何をしたんだコイツらと元気は二人を交互に見る。
「ミール?何があったの?正直に言いなさい」
「ね、姉さん違うんだ、フェルミナが悪いんだって!」
「何だと!?ミール!貴様、私のせいにするのか!?」
「フェルミナさん?」
最近フェルミナはミリャナに弱い。甘やかして貰っているポタンが羨ましいな。とフェルミナがミリャナに言ったところ甘やかして貰ったのだ。
それ以降何かある度にミリャナに褒めて貰いに行って、甘えている。エルフは両親がいないので生まれて初めて、フェルミナは母性に触れているのかもしれない。
「あ、あのだな。ミリャナ。森の皆もミリャナに甘えたいって言いだしてだな……」
「え!?何でそんなことになっているの?」
「ミールがまたエルフの着替えを覗いていたから捕まえたんだ!そしてミリャナに褒めて貰おうと思って連れて行こうとしたら、ミールが私に甘えん坊め!と言ったところを他のエルフに聞かれてしまってな」
「ミール!あなたまたそんなことをしたの!?」
「い、いや違うんだよ姉さん!あのさ、あの、お金が落ちてたら拾うだろ?そんな感じなのさ!」
意味の解らない言い訳を始めるミールに溜息をつくミリャナ。フェルミナに「ミールが御免なさいね」と謝る。
「構わんぞ、褒めてくれ!」
と頭をミリャナに差し出すとフェルミナはミリャナに撫で撫でして貰う。
「で?その後どうなったんだよミール?」
「その後、甘えん坊とか甘えるの意味を教えたらさ、漫画の影響もあったりして。皆、興味持っちゃってさ。どんな感じかはフェルミナに聞いてみなって言ったんだ」
「んで、フェルミナは何て言ったんだ?」
「ふんわりして幸せな感じがするって言った」
「そしたら、皆がお手伝いしたら甘やかして貰えるかなってなってさ、今エルフ全員で会議中」
「パパよりお馬鹿がいるね」
「ポタンちゃん、お口が悪いわよ?でも困ったわねぇ。五十人も無理よ?皆に撫で撫でしちゃってたら一日が終わっちゃうわ」
無理だと言わないところがミリャナの良いところだよなぁ。と元気は思う普通なら悩みさえしないだろう。
「しかし、どうしたもんかな~。ってか君たちって迷惑をかけないと死んじゃう病気かなんかなの?」
「ひでぇな元気!まぁ悪いとは思ってるよ」
「申し訳ない」
この二人、素直に謝るが学ばないのだ。
暫く沈黙が続く……。
「あの?ママ?孤児院のお仕事をエルフに手伝って貰うのはどうかな?ママが休めるようになるし他の人も自由時間が増えるわ。
エルフの魔力で耳は短く出来るから、バレる心配はないし、子供と触れ合う事で常識や倫理観を学んでくれれば問題事が減るんじゃ無い?
外界に関して無知だから、問題が起こるのよね。だからエルフに自ら学ばせれば良いのよ。孤児院の人手不足も解消出来る。お金を払う代わりにママが撫で撫でして甘やかせばお互い助かる。どうかな?
それに孤児院の警備にもなるし、エルフは性欲が無いから、シスターと間違いも起きないと思う。人員確保もお爺様がしてくれた事にずれば、お爺様の支持率も上がるし、恩も売れると思うよ?」
スーパーベイビーがいた。
「フェルミナ、ミール、ポタンを見習え」
「言い返したいが、何も言えねぇ……」
「私は頭を使うのは苦手だ。ポタンに全面的に賛成するぞ!」
ミールが悔しがり、フェルミナは思考を辞める。フェルミナは本当にポタンと同じエルフなのだろうか?と元気は時々思う。
英雄として語られているが、過去に黒竜を引き連れて町を滅ぼそうとしているので、エルフで間違いは無いのだが、どうにも怪しい物である。
「む、元気、お前失礼な事考えているな?」
「ん?いや、フェルミナはいつでも元気だな~って思ってさ」
「ん?そうか?そうだな私は元気だな!いや、元気じゃ無いのだが、元気だな!なんだこれ!面白いな!今度皆に教えてやろうっと!」
「やめなさい」
やろうっと!じゃぁ無い!と元気は思う。フェルミナは美人なのでお茶目をするとちゃんと可愛いのだ。
「でも、エルフの皆さんは迷惑じゃ無いかしら?私達は助かるけれど」
「良いんじゃないかな?ミリャも毎日仕事じゃ疲れるだろうし、やってみて無理そうだったら辞めればいいよ」
「そんな、適当な事……」
「エルフ側は何でも良いぞ?毎日暇だしな!」
エルフ全体では無くフェルミナ個人の意見だが、ここはのっておこうと元気は思う。
「そうそう、変なことしないのは俺も助かるし、考えて見て貰えないかな?ポタンもママともっと一緒にいたいよな?」
「ママ、駄目?」
「もう!元ちゃんずるいわ、ポタンを出して来るなんて……そうね、近いうちに叔父様とマザーに相談してみようかしらね」
「ママ好き!」
「ママもよ~ポタン~」
「パパは?」
「知らない!」
まったく、素直じゃ無いところも可愛いな~と元気が思っていると問題児二人が話しかけてくる。
「大丈夫だ元気!私はお前のこと好きだぞ!安心しておけ!」
「そうだぜ兄弟!愛してるぜ!安心しておけ!」
腹が立つし、不安しかなかった。
その後、ミールとフェルミナにエルフ達へ説明を行って来るよう言いつける。
フェルミナは元気よく、ミールは渋々と出て行った。
「フフフ、有り難うね元ちゃん」
「ん?何が?」
「ママ!提案したのはわたしよ?」
「そうね、ポタンも有り難うね」
ポタンを撫で撫でしながら嬉しそうにミリャナが微笑む。
ミリャナは父親と母親が居なくなってから、誰かに護って貰う。そんなことを考えて来なかった。
元気がミリャナとポタンを護るついでに町を護る。と言っていたと聞いて、とてもミリャナは嬉しかったのだ。ときめいてしまうほどに嬉しかった。
だが、元気からすれば、ミリャナとポタンを護るのは当たり前であり、日常になっている。なのでミリャナの気持ちの変化に元気が気づく事は無かった。
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