エルフ救出大作戦
エルフの檻を引く馬車は直ぐに見つかった。
1つの檻を2匹の馬で引いている。計6台、港町に向かっている様だ。さて、どうやって救出したものか……。
「いたぞ元気!全員ぶっ殺して早くエルフ達を救出しろ!」
フェルミナが後ろで、ぶるるん、ぶるるんとうるさい。まったく、物騒な事を言わないで貰いたい、ゲームじゃないのだ。簡単に人を殺す覚悟が出来るわけがない。
「人が人を殺すと重罪なんだぞ?簡単に言うなよ?」
「構わん!やってしまえ!」
「俺が構うんだよ!」
「じゃぁ!どうするのだ!?」
どうしようか?とりあえず馬車をとめないとな……。
そう考えた元気は、馬車の前までジェット機で飛んでいき、馬車の前へと着陸すると馬車が止まり、エルフさらい達が動揺しだす。
総勢で15、6人だろうか?その中の男一人が声を上げる。
「やっぱり、辞めれば良かったんだ!!!神の怒りに触れたんだ!!!罰が下るんだ!!!」
「神の罰だって!!!やべぇ!!!」
「俺は抜けるぞ!命があっての物種だ!」
15,6人いた人間が蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った……。残ったのは、体つきの良い男、ローブを着た女、それに顔に傷がある男だ。顔に傷がある男がリーダーだろうか?何だか悪い顔つきをしている。
「てめぇら戻れ!!!金払ってんだろが!!!ぶっ殺すぞ!!!」と叫んでいる。
女と大男はその事には興味無さそうに、此方を警戒している。二人もわかりやすい悪い顔をしていた。
女は目の周りのアイシャドウが濃く、赤い口紅で若いかおばさんかわからない。
大男の方は、スキンヘッドで眉毛が無くて唇がゴツい。
「お前達、エルフを解放しろ!」
元気はとりあえず言ってみる。
「あぁ!?てめぇ、神か!?」
首領らしい、顔に傷のある男が凄む。この人は世紀末に出て来そうだ。
「いいえ、違います!」
「じゃぁ何だよ?体中ピカピカ光りやがって!!!何者だ!!!」
体中ピカピカ光ってる?元気はフェルミナを見る。
「ん?どうした?ユグドリアスの力を受けたのだから光る位はするさ、体に力が馴染んだら消えるだろ」
フェルミナは何言ってんの?という感じで言うが、元気の方が何言ってんの?と言いたい。
「どれ位?」
「2,3日位?」
?で?を返さないで欲しい。
うわぁ、ミリャナにどう説明しよう……。
「と、とりあえずだなぁ、俺が何者かは秘密だ、馬車を置いて去れ!そうすれば見逃して、うぉ!?危な!?」
言い終わる前に火球が飛んできた。
元気は焦ったが、同じ様に火球を出して打ち消す。
「ふぅん、やるじゃん、これはどうかしら?」
次は拳位の大きさの氷が無数に飛んでくる。今度は焦らず、それを同じ様に打ち消す。
「はぁ、はぁ、た、ただ者じゃねぇな、アイツ……化け物かよ」
ローブ女の息があがっているが、俺を裏切った貴族の足下にも魔力量が及んでいない。
「これだから魔力使いは使えんな!見てろ、戦いはパワーだ」
大男は立ち上がり馬車から降りると、馬の首根っこをつかみ、ぶぅんっ!と元気達に投げてきた。
結構なスピードである、避けても良いが落下して馬が死んでしまいそうなので、魔法で速度を落とし、地面へと降ろしてやる。
降ろす前に、ヒールで馬の首を癒やしておく事を忘れない。十頭投げた辺りで、大男はゼェゼェと息切れしている。
「本当に、お前は何者だ?」
あり得ない者を見る目で、元気を見ているが元気は馬を投げてくる方が、信じられなかった。
「なぁ、もう良いかな?馬車を置いて何処かへ行ってくれない?」
「元気、こんな奴ら殺してしまって良いでは無いか!森を焼いてユグドリアスを傷つけたのだぞ!?」
「それはそうだけど、人殺しとかやだし、やるなら、運命の女神の力でフェルミナがやれば良いだろ?」
「ぐっ、それは、できんのだ……」
そういうとフェルミナが黙ってしまった。何か神様縛りでもあるのだろうか?
「ブツブツと独り言、言いやがって!気持ち悪い!ふざけやがってくそガキが、この檻の中のエルフだけでも持って行くぞ!!!お前ら、馬車に乗り込め!!!」
「おい!元気!!!」
「誰がガキだぁ!!!くぉらぁぁぁ!!!クソ雑魚共ぉ!!!最後の忠告だ馬車を置いていけ!!!」
元気は両手で天を仰ぎ、巨大な火炎玉を作り出す。それを空高く昇らせ、大声で目一杯叫ぶ。
「エクスプロージョン!!!」
ドゴォォォォォオン!!!という爆音と共にけたたましい衝撃と爆風が元気達の周囲走った。大爆発の爆風で3人が吹き飛んだのと同時に、エルフを乗せた馬車が2,3個横転してしまった。
「きゃー!!!」
「うわぁー!!!」
っとエルフの方々の悲鳴が上がる。
「ば!馬鹿者!何をやっているのだお前はは!!!」
「ご、ごめんて!!!」
元気は急いでジェット機から飛び降り、エルフ救出へ向かう、吹き飛んだ3人は泡を吹いて気絶している。馬は殆ど逃げ出した様だ。
1匹だけ残って此方をジッと見ている……蹴られないか心配だ。エルフを救出し、全員そろっているかお互いに確認して貰う。
エルフのリーダーだろうか?金長髪の超絶イケメンが全員いることを、教えてくれる。
「何所の何方か存じませぬが、助けて頂きありがとうございます!
エルフを代表してお礼を申し上げます!」
「あ、いえいえ、お礼ならフェルミナとユグドリアス様に言って下さい、俺は頼まれただけなので」
「フェルミナとユグドリアス様に?
そう言えば!ユグドリアス様は無事でしょうか!?」
「えっと、その、貴方達を助ける為に俺に力を渡して……苗木になっちゃいまして」
貴方達を助ける為にを強調しておく、怒られたくないのだ。
「そ、そうですか……フェルミナは、フェルミナも来ているのですか?」
「えぇ、ここに居ますよ!と言っても、見えないんでしたね」
「そうですね、見えませんが、貴方がここに居るという事は、本当なのでしょう」
フェルミナとエルフ達には何かあるのだろうか?と思ってふと思い出す。
フェルミナもエルフって言ってた様なな……?
「フェルミナ、ありがとう姿は見えないが、我々は、ちゃんとお前を覚えているぞ!本当に感謝する」
イケメンエルフが、お門違いな場所に礼をするので、軌道修正してあげる。
「気にするな……と伝えてくれないか?」
「気にするなってさ」
「そうか……」
イケメンエルフは嬉しそうに、懐かしむように笑った。
「そうそう、かなりの大事になったけどさ、この子の親を探しているんだよ?」
「子供の親ですか?」
「家の裏の森で、ドライアドっていう人?精霊?に助けてって頼まれてさ……とりあえず、届けに来たんだけど」
「エルフはエルフを産まないので、その子は、ユグドリアス様とドライアド様のお子様でしょうね」
「そうなの?」
「はい、森にいるのはハイエルフだけです、ハイエルフは生殖しません」
元気はイケメンなのに、勿体ないと思ったが森の子供達なので、皆きょうだいかと納得する。
「えっと、じゃぁ、この子はどうすればいいかな?」
親が樹木の場合どうなるのか想像がつかない。
「森が育ててくれます、我々が連れて行きましょう」
「そうですか?助かります」
元気は森が育てるって何だろう?と思ったが、家族がいるなら一緒が良いよな、と思いエルフの子供をイケメンエルフに渡す。あれだけの騒動の中で、グッスリと眠っている……この子は将来大物になるだろう。
森までエルフを護衛し、送り届けると、ユグドリアスに貰った力で、森を再生する。それなりに力を使ったが、まだ余裕がある、神の力は凄い。
「これで、大丈夫かな?」
「なにからなにまでありがとう御座います、ですが、人間に居場所がばれた以上、我々はもうここにはいれません
新天地を求めて、旅する事になるでしょう」
「そうですか」
せっかく出会えたのに、何だか寂しいものだ。
「ユグドリアス様の苗木と共に新天地でひっそり生きていきます」
何か出来ることは無いかな?と思ったが、人間である元気は関わるべきではないのかもしれないと思い、何も言わなかった。
「じゃ、俺は、そろそろ帰りますね」
「はい、ありがとうございました!あの、よろしければお名前をお聞かせ願えませんか?」
「そういえば、言ってませんでしたね、元気と言います」
「元気様ですね、末代までその名を語り継ぐ事にしましょう、エルフを救いし勇者、元気様と」
ハハハと笑顔を返しておく。本音はやめて頂きたいのだが、エルフと会うことはもう無いだろうし、知らないところでどう言われていようが、悪口でないのなら構わない。
元気はフェルミナとジェット機に乗り込み浮上する。
「エルフの救世主、勇者、元気様に祈りを!!!」
ジェット機の下から「おぉぉぉぉぉ~!!!」っと盛大な声が聞こえてきたので、居たたまれなくなり、さっさと発進する。
「おい、勇者元気様」
「やめろよ、恥ずかしくて死にそうだったんだから」
「ハハハ、そうか……、あれだ、その、ありがとうな、助かった」
「あぁ、いいよ、彼ら、良い場所見つかるといいな」
「あぁ、そうだな……」
センチな感じを醸し出しているフェルミナだったが、苦手な空気感である。
「そう言えば、この前さぁ、ミールがメスリラって言ってたんだけど、何かあったの?」
「ほう、アイツ裏ではそんなことを言っているのか……早く帰ろうではないか、やることが出来た」
「あぁ、そうだな早く帰ろう……ミリャが爪切りしてくれる日なんだ、美味しい物を用意しとかなきゃ」
「お前は……何というか、幸せそうだな」
「当たり前だろ?あんな美人なお姉さんが甘やかしてくれるんだから、これで幸せじゃないとか言ったら、それこそ神様に罰が当たる」
「あとさ……」
「なんだ?」
「子供じゃないんだからさ、パンツはけ」
「な!お前!見たのか!?いつ!何処で!どうやって!」
ぶるるん、ぶるるんと空気が良くなった所でジェット機のスピードを上げる。
早く家に帰ろう。
夕食のデザートを幸せそうに食べるミリャを一通り眺めた後、爪切りをして貰い、幸せな気分で元気は眠りについた。
体が発光してることに関しては、日焼けし過ぎたと言ったら信じてくれた。
ミリャナの優しさにとても感謝である。次の日の朝、フェルミナの声で間が覚める。
「元気!元気!客人だぞ!早く起きろ!このままでは、辛抱たまらん!」
「も~、毎朝毎朝、何だよ?も~!」
接近禁止令でも発令しようかと考えながら、玄関の扉をあけると、イケメンエルフが立っていた。昨日よりも明らかに顔が蒼白い。
「朝早くに失礼します、元気様……」
「パパ!パパ!パパ!」
元気を見た瞬間、号泣しながらエルフの子供が元気にしがみつく。
「え?何で?」
イケメンエルフから幼女を受け取り、元気が抱っこすると、ピタリと泣き止んだ。
「やっぱりそうでしたか……良かった。
昨日、あれからずっと、泣いてまして……
仲間達皆がその子の癇癪による魔力に当てられてしまい、寝込んでしまったのです」
「それは、大変でしたね……それで?」
「え?いや、子供を連れて来た人がパパかなと思いまして、連れて来た次第であります」
元気は、いや、お前がユグドリアスとドライアドの子供って言ったんだろ?と思ったが、とりあえず言い分を聞くことにする。
「……それで?」
「えっと……まぁ、あの、届けて貰って、一族を救って貰っておいて、恐縮なのですが、その子をお願いしたく……」
「いやいや、お願いしたくと言われましても……俺、人間ですし……この子はエルフですし」
「大丈夫です!体の構造上、我々は人種族とかわりません!」
「そういう事では無くて……」
「大丈夫です!誠心誠意サポートいたしますので!実はもう、裏手の森に居住するための準備を行っているのです!」
「あぁ、そう……で、何でここが解ったの?」
「ドライアド様から聞きました!」
「あぁそう、あぁそう……」
話しに人間が出てこなくて、倫理観がわからん……その上、寝起きで頭が回らない。
「あの、お願い出来ないでしょうか?」
イケメンにうるうるされてもグッとこない……。
「詳しい話は、また後で……」
「は、はい!では、ひとまず失礼します!」
イケメンエルフは逃げる様に帰って行った。
「お前……何で俺をパパ認定しちゃったの?」
ほっぺをプニプニする。
「う~?」
可愛いな、この野郎……。
とりあえず、二度寝することにしよう……一緒にベッドに入ると子供も一緒にウトウトし始めた。
1日泣いてたらそりゃそうか……。フェルミナも、嬉しそうだったな……。エルフ達のことどうしよ……考えている内に、意識がまどろみのそこへ落ちていく。
ミリャナになんて言おう……?
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