初恋ゴースト空を飛ぶ

スイーツ阿修羅

霊章 享受

「奇怪な日常」

※この物語はフィクションです、実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません。また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものでもありません。

─────



 僕の家には一年前からお化けが住み着いている。


『ほらあきらっ! もう学校行く時間じゃけぇ、早ぅ起きんさいっ!』


 お化けというにはいささか可愛らしい、美少女のお化けである。


「……分かっとる。今起きるけん」


 僕は独り言・・・を呟いて、眠い目を擦りベッドから出た。

 彼女の姿は一般人には見えない。

 彼女の声は一般人には聞こえない。


『おはようあきら! 今日も早起きできて偉いねぇ! 

 朝ご飯にする? 着替えにする? それとも……わ・た・し?』


「……着替えかな。 つーかそれ、お前を選んだら何になるんだ?」


『そりゃあもう、同棲したての時みたく、一日中部屋でうちとあんなことやこんなことをっ……///』


「……耳元で囁くなっ! ……冗談言ってないで、早く学校に行くぞ」


『おうっ! 今日も楽しもーー!』


 お化けになった彼女の名前は、穂風千夏ほかぜちなつ

 小学生だった頃の、僕の初恋の女の子。

 一年前に亡くなった彼女のお化けを、何故だか僕は見ることができた。

 それからというもの、幽霊の千夏ちなつと僕の、奇妙な同棲生活が始まって、今に至る。


 一年前、あの日あの場所で、僕たちは再会した。


 忘れるはずがない。

 あの日、崖の上で見たあの景色は、未だ脳裏に焼きついて離れない。


 ふわふわと黒髪をなびかせる彼女の泣き顔は、夜の闇よりずっとくらくて、魂が呑まれるような美しさだった。

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