第14話 友だちを作ってもいいですか?

 A子がかよう学校には七不思議があって、その一つにA子と同じ名前のオバケが出てくるものがある。こんな話だ。


 そのオバケは、日暮れ時に学校の廊下に一人でいると現われる。

 見た目は自分と同い年くらいの女の子だが、顔が影になっていて表情などは見分けられない。

 オバケはまず、こう問いかけてくる。

「友だちを作ってもいいですか?」

 変な質問だが、笑ったり、「いやだ」と言ったりしてはいけない。その場で殺されてしまうからだ。

 返事をしなかったり無視したりすると、家までついてきて、一人になるたびに「友だちを作ってもいいですか?」と聞いてくる。

 それゆえ、最初の質問には「いいよ」と答えなければいけない。すると、「何で作る? 石? 鉄? 木? 人間?」と聞き返してくる。

 ここで石とか鉄とか木とか答えてはいけない。答えた物質に変えられてしまうからだ。

 そこで「人間」と答えると、「人間のどの部分を使う? 腕? 足? 脳?」と聞き返される。

 この時、体の部分を言うと、その部分を奪われてしまう。

 そうならないためには、「あなたの体」と答えなければいけない。

 そう言うとオバケは、「じゃあ、私が友だちになるのね?」と言うので、「うん」と答える。そうしないと、頭を引っこ抜かれて殺されてしまう。

 「うん」と答えると、オバケは自分の顔や胴体を撫でる仕草をする。

 それが終わると、「友だちできたよ、名前をつけて」と言ってくる。

 この時、知り合いの名前を言ってはいけない。、その人が人形にされてしまうからだ。

 芸能人とか歴史上の人物とかデタラメな名前もいけない。オバケを怒らせて殺されてしまうからだ。

 なので、「名前をつけて」と言われたら、オバケの名前「A子」と答えなければならない。そうすると、オバケは嬉しそうに「はーい」と言って消える。

 そう伝えられている。


 A子はこの伝説のせいで学校でからかわれていた。

 なにかといえば「友だちを作って」とか「名前をつけて」とか言われて笑われるのだ。

 A子は、そんないじめっ子こそ、オバケに殺されてしまえばいいと思っていた。

 そんなある日、A子は学校の廊下でオバケに遭ってしまった。

 翌朝、同級生たちが登校してくると、A子の机がなくなっていた。

 どうしてだろうと話している間に先生がやってきたので、みんな席に着いた。

 教室が静まるのを待って先生は言った。

「今日はお友だちを作ります。いいですか?」

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