俺らの夏
雪蘭
第1話 夢の終わり
ウォーーーーーーーーーーーーーーーン
響き渡るサイレンの音を聞いて、自信のあった俺のストレートがライトスタンドに運ばれたことを知った。
9回ウラ2アウト1塁、1点リードの展開。もうあと1アウト。
1アウトさえ取れれば、俺たちのチームが甲子園に出場できたはずだったのに。普段よりほんの少し、少しだけ浮いた俺のストレートのせいで、チームは地区大会敗退となった。
ダイヤモンドを走り抜けた選手に、そのチームメイト達が人差し指を立てながら歓喜の笑顔と共に駆け寄っていく姿が、スローモーションに見えた。
受動的に挨拶のために集まった俺のチームメイトは皆、隠すこともままならずに大粒の涙を流し、それらと汗が混ざってグラウンドに濃いシミを作っていく。
そんな中俺は、なにを考えるわけでもなく呆然と、相手チームの校歌が流れるのをただ聞いていた。
こうして俺らの
道具を引き上げた後のロッカールームも、学校に帰る道中でさえ、いつもは騒がしいはずなのに、誰かが啜り泣く声が聞こえること以外は静寂だった。
俺はチームメイトが歩く少し後を、足取り重く付いていく。前を歩くいつも誇らしげな背中が今は、小さく頼りなげに見えた。
結局その日は何も話すこともできず、各々自宅に帰った。
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