ティル・ナ・ノーグからの贈り物。

猫野 尻尾

第1話:空から降って来た女の子。

癒しの国「ティル・ナ・ノーグ」は異次元のどこかにあって、その国にちょっと

ばかり可愛くて、お茶目な妖精たちが住んでいた。

妖精たちはニンフと同類ですべてが女性で、彼女たちは「ティル・ナ・ノーグ」

の中央に立つ「フェリムの木」の根っこから生まれる。

そして風に乗ってそれそれの花園で美しい花を咲かせる。


妖精は人間にはない不思議な能力や魔力を持っていて、それは魔法のような

もので、宙を自由に舞ったり、傷を癒したり病気を治療したり時には心のケア

まで得意とした。

妖精は不老長寿と言われているがティル・ナ・ノーグの妖精たちは人間と同じ

ように歳を取って寿命を全うする。


そしてこの話の舞台となる人間界。


「姉ちゃん、行ってきま〜す」


「いってらっしゃい!大気たいき、車に気をつけるのよ」


「ほ〜い」


そう言って彼は玄関を出た。


彼の名前は「空中 大気そらなか たいき」現在高校二年生。


「お〜今日もいい天気だよ」


って大気が空を見上げた時、空?って言うか空間?って言うか・・・その

空間あたりに、ふっと何かが現れた。

近眼じゃなかった大気でも、それがなんなのか把握できるまで少し間がかかった。


「え?・・・なに?人?」


なにもない空間から仰向けに寝た状態で誰かがゆっくり降りてきていた。


そのままだと間違いなくに地上に降りてくる。

大気は目測を定めて降りてく人?の場所まで移動して、そこで降りて来る

その人を待っていた。


その人がスローモーションみたいに徐々降りて来る・・・。

なんで、そのままストンって落ちてこないんだろう?


「え?・・・女?・・・女の子?」


地面に降りるまえに大気は彼女を受け止めた。

いわゆるお姫様抱っこ。

大気の目の前に降りてきたのは間違いなく女の子。

見たところ歳は大気と変わんない感じだった。


大気はその子の顔に自分の顔を近ずけて息をしてるか確認した。

ちゃんと息はしていたから生きてる・・・気を失ってるだけのようだった。


ってか、なんかあどけないし、めちゃ可愛い。

大気はその子に一目で心を奪われた。


「君・・・君、大丈夫?」


声をかけたけど女の子は目を覚まさない。


「君!!・・・大丈夫ですか?」

「困ったな・・・このままここにいて車が来たりするとヤバいかも・・・」


そう思った大気は彼女を抱いて自分ちへ連れて帰った。


「姉ちゃん・・・この子が空から降りてきた」


大気がそう言ったもんだから台所にいた姉のあかねが玄関まで来て言った。


ちなみに姉の名前は「空中 茜そらなか あかね」大学二年生。

大気より四つ歳上・・・大気は茜と二人暮らし。

親からの仕送りと茜と大気のバイトでやりくりしている。


「なにバカ言ってんの・・・そんなに学校サボりたいの?・・・・・」

「え?・・・なに?・・・それ、その子どうしたの?」

「なんでお姫様抱っこなんかしてんのよ」


「そこで拾った」


「拾ったって・・・犬や猫じゃあるまし・・・」


「とにかく声かけても起きないんだ」

「放っておけないだろ?」

「なんでもいいから上がらせてよ・・・この子見かけより重いんだ」


「ああ、じゃ〜とりあえずソファにでも寝かせて」

「拾ったってどういうことよ」


「拾ったっつうか・・・空から降ってきたっつうか」


「空から人なん降って来るわけないでしょ」

「大気・・・ゲームのしすぎだわ、幻覚見てるんじゃないの?」


「違うよ・・・この子は幻覚なんかじゃなくちゃんとした実体だろ?」

「姉弟で同じ幻覚見るわけないじゃないかよ・・・」


「あんた、どこ見てんの・・スケベ」


「いや、一応どこも怪我とかしてないか体をチェックしとかないと」


「胸しか見てないけど・・・」


「たいがい女の子と遭遇したら自然に見るのは顔と胸だろ?」

「でも、なんで空からなんか降りてきたんだろ・・・分かんないんだよな」


どうしたもんか・・・。


まじで降って湧いたような出来事に茜も大気も戸惑っていた。

だいたい人が空から降ってくるってこと自体、ありえないからだ。

ファンタジーやSFじゃあるまいし・・・。

あやしい話が満載な雑誌に話したら喜んで取材にやってきそうだった。


行きがかり上とは言え、大気はこの子に関わちゃった以上放置するわけにも

いかず・・・この子が目覚めるまでは様子を見ることにした。


大気はソファーに寝てるその子を見て胸キュンになっていた。

ってことは?一目惚れ?・・・見ず知らずの女の子に?まあ、ありえること

ではあった。


とぅび〜こんて乳。


異世界からやって来た女の子シリーズ、ご多分にもれずヒロインが主人公

の家に居座るという定番のパターンです。

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