第101話 双剣の神器

 双剣の神器が返ってきた翌日、高校の訓練場にて、双剣の神器を使いこなすための訓練が始まった。


 双剣の神器は、ひとまず栞先輩が装備することになり。腰にベルトをつけて腰の後ろに固定する形になった。


「陸人くん!」


「はい!」


 栞先輩の後ろから神器が飛んできて、オレの目の前にやってくる。それをパシッと受け取り、目の前の敵を斬りつけた。VR上の敵が斬り裂かれ、霧散する。


「悪くねぇな」


「あざっす!」


「使い心地はどうだ?」


「やっぱ、神器だけあってめちゃくちゃ軽くて使いやすいです! さっき試した感じだと、切れ味も凄いですし!」


「そうか。まぁ、道具に頼りすぎんなよ」


「はい!」


「で、実際、どうなのよ? 戦力になりそう?」


 鈴が近づいてきて聞いてくる。


「おう! いい感じだ! ありがとな!」


「な、なにがよ?」


「おまえが離さなかったおかげで手に入った武器だからな!」


 池袋駅ダンジョンでのことを思い出す。コイツは、気を失っていた間も、この双剣を握りしめていたのだ。


「でも……そのせいで、荻堂せんせが……」


「イッシンはそんなの気にしてない。事情はイッシンからも聞いたし、大丈夫。ムーニャももう怒ってない」


「だってさ!」


「そっか……うん。ちゃんと使いこなしなさいよ!」


「おう! 任せろ!」


「ところで、その双剣、なんで政府に預けてたの? スズが手に入れたんだし、スズの物でしょ?」


「ダンジョンから持ち帰ったものは、一度、政府機関による検品と登録作業が行われる決まりなんです」


「そうなんだ? 変なの」


「ねぇねぇ、そういえば、この子に名前は付けないの?」


 ゆあちゃんがオレが握る神器を見つめて聞いてくる。


「名前? 武器に?」


「うん。栞ちゃんは薙刀に名前付けてたよね?」


「ええ……お恥ずかしながら……」


「へー? そうだったんだ。どんな名前なんですか?」


「えっと……雷撃をピカピカ出す薙刀ということと、刃の部分が湾曲しててお月様みたいだなー、という理由で、光月こうげつと……」


「ほほう。オシャレだ。さすが栞先輩、センスありますね」


「ありがとうございます……」


 栞先輩は恥ずかしそうにしながらも、ニコッと笑ってくれた。


「んー、じゃあコイツに名前をつけるとしたら……」


 双剣の神器を改めて見る。真っ黒だ。刃の部分も黒ければ、柄も黒い。いつも使っている双剣は、どちらかと言えば洋風だが、こいつは和風のデザインではある。じゃあ、日本っぽい名前がいいのか?


「黒いから……黒いから……クロスケ?」


「なによそれ」


「りっくん、センスないよね……」


「ひどいなぁ……んー……」


「なら、ムーニャが命名してあげる。漆黒丸、これがいい、これにすべき」


「ふむ? その心は?」


「黒いから」


「陸人と似たようなセンスね」


「そんなことない。リクトより全然ハイセンス。一緒にしないで欲しい」


「こっちのセリフなんだが? てかさ、オレ、こういうの苦手なんだなぁ……ムーニャのアホに付けられるものムカつくし……栞先輩、付けてくれませんか?」


「え? 私ですか? んー……」


「なんでシオリ? ムーニャの言うこと聞け、バカリクト」


「うっさい。アホムーニャ」


「むー……リクト、イッシンと似てる」


「あはは、たしかに似たもの師弟ですよね。えっと、双剣のことですが、スキルを使えば空を飛び回りますし……小さくて可愛らしいので……雲雀ひばり、というのはどうでしょうか?」


雲雀ひばりですか。なんですっけ? 鳥の名前でしたっけ?」


「ええ。小さくて可愛い鳥さんです」


「ふむふむ?」


 内心、『可愛いよりもカッコいい方がいいのでは?』と思うが、せっかく栞先輩が考えてくれたんだし、とも思う。


「お気に召しませんか?」


「いや! いいと思います!」


「そうね。クロスケなんかより100倍いいわ」


「うるさいなー」


「漆黒丸よりも素敵かもね♪」


「ユアもイジワル。キライ」


「うそうそ! でも、雲雀ひばりって名前の方が可愛くない? ムーニャちゃんはどう思う?」


「確かに可愛い。イイと思う。さすが鳴神流の未来の師範」


「ありがとうございます。では、名前も決まったことですし、もう少し連携の練習をしましょうか」


「はい! やりましょう!」


 ということで、オレの新しい相棒は、雲雀ひばりという名前を襲名した。ま、装備するのは栞先輩だけど、いざというときにはオレがメインで使うことになるだろう。心強い新戦力である。

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