第41話 次のダンジョンと戦力増強について
VR訓練から数日、ステータスボーナスの割り振りは保留して、桜先生のトラウマ克服に努めることにした。
桜先生が1人でVR訓練を行うのはキツそうだったので、最初の数日間はオレがずっと手を握っていた。
なんだか、オレを見る目が、日を重ねるごとに熱っぽくなってきてる気が……いや、たぶん気のせいだろう。とにかくだ。桜先生のトラウマを克服しようと奮闘していたのだが、オレが手を握ったり、声をかけてあげると落ち着くようで、一応モンスターが出てきても発作が起こらないようにはなってくれた。
「ふぅ……」
訓練が終わり、桜先生が息を吐く。
「お疲れ様です。大丈夫ですか?」
「ええ、陸人くんが声をかけてくれるおかげでなんとか。陸人くんに〈守ってやる〉って言われると落ち着くんです。うふふ♪」
「そ、それは良かったです……」
「ゆあだけの、ゆあだけの特別な言葉だったのに……」
後ろから呪詛のような呟きが聞こえてきたが、それには触れないようにする。
「えっと、桜先生のリハビリもだいぶ順調だし、そろそろ、どのダンジョンを攻略するか考えようか」
「いいわね。それと、戦力の増強についても話したいわ。さすがに戦えるのが3人だけってのは心許ないしね」
「わかりました。では、その二つについて話し合いましょうか」
オレたちは一旦教室に戻り、桜先生がまとめ役となって、会議を始めることにした。
「それではまず、〈どのダンジョンを攻略するか〉についてですね。皆は、候補とかあったりする?」
「なんでもいいって話なら、比較的安全ってことになってるダンジョンがいいと思うわ。あと、ボスの情報が判明してるのも条件に入れましょ」
「まぁ、そうだよな。あくまで本命は東京駅ダンジョンだし、それまではなるべく慎重にいきたい」
「そういうことでしたら、ボスの情報が判明しているダンジョンで絞り込みましょう。攻略されていない26のダンジョンのうち、ボスとの交戦記録があるのは、10箇所になります」
「半分もないんだ……」
「ええ、それだけ、ダンジョンというのは攻略が難しいということでしょう。だから、皆は本当に凄いんですよ!」
桜先生が褒めてくれて、オレたちは笑顔になる。
「話を続けますね。それで、この10箇所のダンジョンのうち、比較的安全で学生の訓練に使われているのは2箇所、鶯谷駅ダンジョンと大崎駅ダンジョンになります」
「なるほど、じゃあ、その二つのどっちかがいいかな?」
「では、この二つのダンジョンについて、詳しい情報開示を政府に要求しておきますね」
「ゆあたちはダンジョン踏破者だから、申請すれば情報もらえるんだっけ?」
「そうですね。いわゆる踏破者の特権というやつです」
「そっか。ならもう、りっくんのおじちゃんにお願いしなくても大丈夫なんだね」
「ああ、お父さんも結構危ない橋だったと思うし、良かったよ」
「じゃ、ボスの情報がきたら、VR訓練をしつつ、実際に何度か潜って調査してみる、そんな感じでいいかしら?」
「ああ、それでいいと思う」
「では、次のダンジョンについては以上で、〈戦力の増強〉についても話し合いましょうか。陸人くんのスキルの特性上、一定以上の信頼関係がないとクラスには加入できないんですよね?」
「はい、そうみたいです。具体的にどれくらい信頼されてないとダメかはわからないんですが、中学のときにクラスメイトを勝手に加入させようとしたら誰も入れれませんでした……」
「そのあと、鈴ちゃん、桜ちゃんが加入しただけで、誰にも試してないんだよね?」
「いや、正確には、オレのお母さんとお父さんとゆあちゃんちのおじさん、おばさんは加入できたよ。さすがに入れなかったけど。あ!あと!ゆあちゃんちのポチも!あいつオレに懐いてるからなー!」
「りっくん……そんなこと試してたんだ……」
ゆあちゃんに、なぜか憐れみのこもった顔を向けられた。なぜだ?
「なんか可哀想なやつね。それくらいしか友達いないって確認するみたいで虚しくなかったわけ?」
「へあ?……そ、それは……む、虚しくないもん……」
「何泣いてんのよ」
「鈴さん!やめてあげて!陸人くん、よちよち。陸人くんには私がいますから。私が友達100人分の愛を与えてあげます」
桜先生がよくわからないことを言いながら頭を撫でてくれた。しょんぼりしてたオレのMPが回復していく。
「はぁ……まぁいいわ。今のところクラスに加入できる人はいないみたいだけど、これから募集するってのはありよね」
「そうだね〜。一緒に戦ってくれる人、見つかるかなぁ?」
「前にも言ったけど、生徒会長とかどうかしら?ダンジョン踏破者の1人だし、あの人がいたら心強いわよ、きっと」
「んー……」
オレは生徒会長と言われて首を傾げる。
「なによ?」
「なんか、あの人の演説を聞いて思ったんだけど、もう、戦う意志を感じなかったんだよなぁ」
「そうかしら?気のせいじゃない?あんた、他人の気持ちとかわかんないでしょ、ノンデリなんだから」
「ひどい……」
「陸人くんがピンとこないなら無理に勧誘はしなくていいと思いますよ」
「桜せんせ、甘やかしすぎないでよ」
「いえ、一緒に戦う仲間ですし、相性が良い人を選ぶべきだと思って」
「まぁ、それもそうかも〜。でもでも、そんなこと言ってたら誰も見つからないよ?ただでさえ他のクラスと接点ないんだし」
「でしたら、来月の体力測定で気が合いそうな人とか強そうな人に声をかけてみてはどうでしょう?全学年合同で2日間実施されるので、声をかけるチャンスはあると思います」
「ふむふむ」
「良いアイデアの気もするけど、こいつにそんなコミュ力あるとは思えないんだけど?」
「そこは、ゆあたちがフォローすれば良いんじゃない?」
「ま、それもそうね」
ということで、来月の全校合同体力測定で新しい仲間を探そうということに決まった。
なんかオレの扱いが納得いかないが、まぁしょうがない。友達を作ってこればみんなも黙ることだろう。全く自信はないが、見ているがいい!
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【あとがき】
本作を読んでいただきありがとうございます♪
「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、あらすじの下にあるレビューから「★で称える」をいただけると助かります!
「もう一歩!」なら★
「頑張れ!」なら★★★
ブクマもいただけると泣いて喜びます!
なにとぞよろしくお願い致しますm(__)m
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