第35話 チートスキル《王国の城壁》
「と、とりあえず、これからよろしくお願いします……桜先生」
鈴にゴム弾を撃ち込まれた2人が、一応落ち着きを取り戻し、冷静に話せるようになってから、オレから声をかけてみた。
鈴のやつが、「またケンカしはじめたら撃つわよ」と言わんばかりに、二丁拳銃をクルクルと指で回している。
「うふふ♪こちらこそ♪陸人くんのお役に立てるよう、精一杯頑張りますね♪それに、双葉さんもよろしく。あとは、えっと、幼馴染さん?もよろしくね?」
「的場です。別に覚えなくてもいいですけど」
「うふふ……」
「あははは……」
2人が暗い笑顔で睨み合っていた。
「もういいから。そろそろゆあのスキルの実験しましょ」
「……うん、わかった。ゆあのすごいところ、みんなに見せちゃうんだから!」
「おぉ〜、パチパチパチ」
オレは、昨日からずっと気になっていた、ゆあちゃんのスキルをやっと見れるということで、ワクワクしはじめた。早く見たい!
「的場さんのスキルって、《王国の城壁》でしたっけ?」
「そうみたいね」
「双葉さんのスキルが《分析》で、陸人くんのが《クラス替え》、それで的場さんが《王国の城壁》。並べてみると、スキル名には統一感がないことがわかりますね」
「ですねぇ。スキルの性能も全然違いますし。では、ゆあちゃん、お願いします!」
「うん!いくよー!すぅぅ……グランシールド!」
ゆあちゃんが叫んで両手を前に出すと、金色に輝く透明な盾が空中に現れた。洋風の盾で勇者が装備していそうな見た目だ。そんな勇者の盾が、ゆあちゃんの両手の1メートルほど前に浮いていて、微動だにしない。
「おおー!魔法!魔法みたいだ!いや!魔法そのものだ!」
「どうどう!すごくない!」
「すごい!かっこいい!」
「えへへ!やった!りっくんに褒められちゃった♪」
「これ、どういう能力なんですか?」
桜先生が金色の盾に近づいて観察する。
「えっと、〈どんな攻撃も弾くことができる〉って解説者が言ってたよ?」
「へぇ〜、それはすごいですね。いくつまで同時に出せるんですか?」
「え?……わかんない……」
「じゃあ、実験だね。とりあえず、この盾の耐久性試してみていい?」
オレは訓練用の双剣を持って盾の前に移動する。桜先生はそれを見て、横にズレてくれた。
「うん!かかってらっしゃい!」
ゆあちゃんがまた両手を前に出した。魔力でも送っているのだろうか?あとで聞いておこう。
そして、ゆあちゃんのスキルについての実験が始まった。
《王国の城壁》このスキルは透明な盾を空中に生み出すことができるスキルで、物理攻撃は一切通さない盾であることがわかった。オレの全力の攻撃もアトムの全力も全く意に介さない。攻撃した方がダメージを受けそうなほどカッチカチだった。そして、光学銃にも耐性があった。鈴の二丁拳銃で撃っても、盾に当たった瞬間、光弾が曲がってしまう。
「これはすごいわね……ゆあ、まだいけそう?」
「うん!まだまだいけるよ!」
「そのグランシールドって、無限に使えるの?」
「ううん。解説者さんが言うには、魔力を消費してるから一定数使うと使えなくなるって」
「ほほう?」
オレは、〈魔力〉というワードに聞き覚えがあって、《クラス替え》スキルの画面を表示してゆあちゃんのステータスを表示した。たしか、オレとゆあちゃんの魔力は、ずっと0だったはずだ。
――――――――――――――――
氏名:的場柚愛(まとばゆあ)
年齢:15歳
性別:女
役職:無し
所有スキル:王国の城壁
攻撃力:19(D-)
防御力:14(E+)
持久力:31(C-)
素早さ:26(D+)
見切り:15(D-)
魔力:20(D)
精神力:39(C)
学級委員への好感度:100/100
総合評価:D
――――――――――――――――
表示されたステータスは、所有スキルのところが〈無し〉から〈王国の城壁〉に変わっていて、魔力のところが、〈0〉から〈20〉に増えていた。
「ホントだ。ゆあちゃんの魔力、20に増えてる」
「ほんと?」
「へぇ~」
ゆあちゃんと鈴が左右からモニターを覗き込んでくる。
「この魔力ってのを使ってるとすると、魔力20ってのがどれくらいMPがあるのか試しておかないとな。グランシールドを何回連発できるのか把握しておきたい」
「あとは、使い切ったあと、どれくらいしたら回復するのかも知りたいところね」
「たしかにそうだよね。うん!実験してみよ!」
こうして、オレたちはゆあちゃんのスキルについて実験を続けた。
実験の結果、ざっくりだが20回くらいは連発してシールドを展開できることがわかった。しかしそれも、展開している時間によって変化するみたいなのでハッキリとしたことはわからない。まぁそのあたりは感覚で覚えてもらうとしよう。
次にMPの回復についてだ。グランシールドを20連発して使えなくなったあとは、10分くらいしたら一回分は回復することがわかった。MPは自然回復するらしい。それとMPを使い切ったからといってフラフラする、みたいな副作用はないようだ。
そのあとも色々と話して、「魔法とか炎とかって防げるのかな?」という話になる。さっそく、アトムに火炎放射器を用意してもらい炎を吹きかけてみる。盾の位置はある程度離せるようだったので、このときには、5メートルほど前に盾を顕現させて火炎で焼いてみた。結果、ノーダメージで、しかも、盾の後ろには炎がいかないように弾いてくれていた。
まさに鉄壁の防御である。
「す、すげぇ……すげぇよ!ゆあちゃん!」
「ホントに!?この力でりっくんたちを助けれるかな!」
「ああ!うみねぇちゃんだって助けれるよ!ゆあちゃんはすごいなー!」
「やった!ゆあ!もっと頑張るね!」
「うん!一緒に頑張ろう!」
オレたちが両手を握り合ってぴょんぴょんと跳ねていると、桜先生がじっと見ているのに気づく。
「せんせ、嫉妬ですかぁ?」
「双葉さん?私は大人なのであの程度で怒ったりしませんよ?」
「そうですか。なら良かった。ラブコメはうんざりなんですよ」
「そう?じゃあ、双葉さんは参戦しないってことでいいのよね?」
「もちろん。どーぞ好きに取り合ってください」
「うふふふ……」
なんだか、邪悪な気配を感じたので、落ち着いてから2人に近づく。
「じゃ、じゃあ、今日はこの辺で、解散ということで」
「そうですね。そろそろ夕食の時間ですし、お暇しましょうか」
「ううん、待って」
鈴がオレたちのことを呼び止める。
「わたしのスキルも進化したみたいだから、それについても共有しましょ」
「進化?」
「ええ」
「マジかよ……」
なかなかにワクワクする展開だ。ワクワクしかないまである!
「ワクワク!!」
「りっくん、口に出てるよ?」
「うふふ♪かわいっ♪」
「おっほん!えー、ならさ、とりあえず、お母さんに夕食出してもらうよ。食べながら話そうぜ」
ということで、お母さんに連絡して、ご飯を待つことにした。その間にオレたちの戦闘スタイルについて、実演しながら桜先生に説明する。オペレーターをやってもらうために必要だと思ったからだ。
ある程度動きながら説明をし終わると、「さすがダンジョン踏破者、凄まじい動きですね」と桜先生が褒めてくれた。鼻高々である。
「へへ、それほどでも。あざっす!」
「すごくカッコいいです♪」
「あ、あざっす?」
褒めてもらい、満足したころ、アトムとお母さんが夕食を運んできてくれる。オレたちは、お母さんを含めた全員で食卓を囲むことにした。
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