寝坊した緑レンジャー
ちびまるフォイ
勤怠不安定の緑レンジャー
「怪人め! そうはさせんぞ! とう!!」
「出たな! Goレンジャー!」
「赤レンジャー!!」
「青レンジャー!!」
「黄レンジャー!!」
「ピンクレンジャー!」
「「 5人揃って!! 」」
「Goレンジャー!!!」
4人の背中から爆炎があがる!
「怪人め! 覚悟しろ!!」
怪人は目を丸くして答えた。
「あれ? 5人目は……?」
怪人との戦闘後、緑レンジャーは会議室に呼びだされた。
「……つまりこういうことだと。
昨日は遅くまでゲームして、それで目覚ましも忘れて。
で、起きたときは12時だったと」
「はい……あの、今後はちゃんと注意するので……はい……」
「うん、死ね☆」
「怪人よりも無慈悲なことを!!」
「緑レンジャーさ。今回俺らどんな気持ちで戦ったと思う?
合体ロボの呼び出してもさぁ、右手だけないのよ」
「あでも普通に倒せちゃったんですね……」
「いやまあ、ぶっちゃけ右手なくても行けたけど。
目から出す光線がメインウェポンだから。
でもそういうことじゃないわけ」
「はい……」
「俺ら戦隊ヒーローは朝8時から戦闘。
午前6時にはリハ含めて現場入りがマスト。
今に始まったことじゃないんだからしっかりやってくれ」
「すみません……」
レンジャー説教をされてからも緑はもやもやした気持ちが残った。
(自分がいなくても普通に怪人倒せちゃうじゃん……)
その思いはまるでシミのように心に広がり、
緑レンジャーのモチベーションを下げていった。
思い返してみれば、Goレンジャーになってからも
とどめの攻撃である"Goビーム"も打たせてもらっていない。
自分の人間性を掘り下げる「緑レンジャー回」もない。
「本当に俺って必要なんだろうか……」
答えの出ない悩みを引きずりながらレンジャー宿舎を歩いているときだった。
赤レンジャーと青レンジャーが話をしている。
「どう? 面接の結果は?」
「よさそうな新人がひとりいたよ。
緑レンジャーの代わりとしては申し分ない」
「そりゃいい。緑レンジャーの世代交代だ」
「でも、本人にはどう伝える?
文句言われたら面倒だぞ」
「そのときは戦闘中にやられたことにすればいい。
そうだよ。それがいい。弟子がいた設定にしよう」
その言葉を聞いて緑レンジャーは声が出なかった。
ここで"ふざけんな"と怒って出られる度胸もなく、
せいぜいが辞表を社長レンジャーに提出するだけだった。
「これは……どういうことかね」
「もうレンジャーとして頑張れる気がしなくて……」
「しかし、もうグッズの発注の始めている。
急に君に抜けられては困るんだよ」
「社長もすでにご存知なんでしょう?
次の緑レンジャーの候補を探していることを」
「な、なぜそれを……!」
「ここで僕がいなくなるほうが好都合じゃないですか。
だから……」
「ばかやろーー!!」
社長レンジャーによるレンジャービンタが飛んできた。
「え……?」
「緑レンジャー! 君はどんな気持ちでレンジャーになったんだ!
現場の仲間とうまくいかないから辞める? そうじゃないだろ!!」
「……!!」
緑レンジャーは思い出した。
自分が一番最初にレンジャーを志したときの気持ちを。
「僕は……戦う姿に憧れて、レンジャーになりました!」
「そうだろ!!」
「たとえ周りにうまく溶け込めなくても!
僕は自分のあこがれる姿を目指します!!」
「そうだ!! 君は最後まで戦ってこその緑レンジャーだろ!!」
「はい!!」
緑レンジャーの胸に熱い魂が戻ってきた。
それはレンジャー隊員誰よりも強い気持ちだった。
「緑レンジャー。ではこの薬を君にあげよう」
「この薬は?」
「君の力を増幅するものだ。次回は君の回だよ。頑張りたまえ」
「僕が主役になるんですか!? やった!」
緑レンジャーは気合が入る。
薬を一息に飲み込んだ。
「僕が主役……かぁ……」
緑レンジャーは実家の母に喜びの電話を入れた。
そして次週。
Goレンジャーはいまだかつてない危機におちいった。
「くそ! なんてことだ!!
まさか緑レンジャーが怪人になるなんて!!」
「もう理性がないわ!」
「殺すしか無い!」
「でも合体ロボの右手がない状態で、
怪人化した緑レンジャーを倒すことなんてできない!」
テレビの前のちびっこも諦めかけたとき。
太陽を背に新レンジャーが現れた。
「私は緑レンジャー2号!! 師匠はこの手で送ってみせる!!」
こうして新・緑レンジャーの活躍で怪人は爆発四散して消えた。
まごうことなき緑レンジャー回に、ちびっこは大興奮だったという。
寝坊した緑レンジャー ちびまるフォイ @firestorage
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