19.

それは母親も同じだったようで、まさかの相手に言われるとは思わなかったのもあるかもしれないが、同じような顔をしていた時、急にハッとしたような顔をした。


「⋯⋯もう匡も勝手にしたら」


憎しみを込めた顔で捨て台詞を吐いたその人は、ぶつぶつ文句を言いながら下の階へと降りて行った。

その恐ろしい後ろ姿が見えなくなった途端、膝から崩れ落ちた。

ずっと言われっぱなしで、殴られっぱなしで掃き溜めのような自分が親にあのようなことを言えるとは思わなかった。

あの時の反動なのか、全身が凍えているかのように震えが止まらない。


「⋯⋯はは⋯⋯情けない」


おかしくて、渇いた笑いが溢れる。


「兄貴っ!」

「しょーやさまー!」


バンッとけたたましい音と共に二人が飛びついてきた。

その勢いで倒れ込む形となったが、痛いというよりも二人が負けじと泣きじゃくるものだから、驚いてただ見ていることしかできなかった。


「兄貴ぃー! 兄貴ー! 本当にごめんっ! おれのせいで!」

「しょーやさまー! ぼくは、いつでもおそばにいますぅー! いたいのいたいのから、まもりますー!」


わぁーと泣き喚く二人に、「分かったから」となんとか宥めようとするが、一向に収まらない。

困惑しつつも、落ち着くまでこうしてあげようと頭をそれぞれ撫でた。



そうしてしばらくしたのち、二人は落ち着いてきたようで静かになっていった。


「⋯⋯落ち着いたか?」


上半身を起こしながらそう言うと、小さく頷いた。

ジルヴァはずびずびと鼻を啜って、まだ泣きそうにしていたが、何とか堪えているようだった。

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