転生したら宇宙人だった~圧倒的技術で人類を操りたい~

小乃ネコ

宇宙人だけどパーティーから追放されました

 周りには灰色の禿が数人?いた。可愛げのない大きな目の小さな禿だ。

 意味の分からない言語で何か話し合っていた。


 「ハラミステーキタベマッカー?」

 「マズハバラデショー」

 「セーヤナ」


 みたいな感じだった。

 辺りはシルバーな空間でとても眩しく、それほど広くもない。変な膨らんだ柱が真ん中にあって、縦長の窓がいくつか囲っていて、あと脇には石のベッドみたいのがあってそこには知らない人間が寝ている。


 「オマエノキョウノバンメシハトノサナバッタデイイカナ?」


 隣の禿が無表情になんか聞いてきたがよくわからない。とりあえず俺は、


 「へいよーぐっすすっす」


 適当に返事をしておく。初対面なのにこんなに馴れ馴れしいとか緊張するわ、俺、人見知りだし。なんかキモイ見た目、仮装かな? してるし、引くわー。


 「ヘイヨーグッススッス??? アホカテメェ?」

 「たべのろーす、ろーすっす」


 無表情なのになんかキレてるのが伝わる。声色が立っているわけでもない、なんか直感で。

 てかさ、なんなの? 宇宙人だよな、それ? でもってここUFOの中だよな? 冷静に見まわしてもお前ら変態だよな? 

 そもそもなんで俺、ここにいるの? 確か俺は高校の通学中にトラックに――――


 「ヘイヘイ、ジュジュジュシシュssyススチュウ!!」

 「hun??」


 可愛げなく早口言葉みたいなのを俺に叩きつけると、灰色の禿らは人間の寝ているベッドのほうへ集まっていった。

 そうしてその人間を取り囲むとどこからかへなちょこな道具を取り出して、人間に――――ぶっさした!? なんか血が噴き出してんだけど!!?


 「ヤベーナコレ、ヤベーワ」

 「セヤナ、コレ、ヤベーナ」

 「セヤ、ユケツシトクカ!」

 「エエヤン!!」

 「ウシノチシカナカタワ!」

 「ニンゲンモウシモカワンネーヨ」

 「セヤナ」


 おk。これは質の悪い夢だ。なんか演技にしては出来過ぎている。そもそもそうだ、俺はなぜここにいる? その記憶がないんだが? 故に夢だ。夢に違いない。

 

 「ヤベッチッチ!」

 「アワー!」


 あ、また血が噴き出てる。真っ赤な血が天井にベッタリ、灰色の奴らはそのまま灰色で血はその肌から弾かれてる。

 まじか、マジでこいつ等、宇宙人みたいなのじゃん。うわ、吐きそう、血生臭いのもあって吐きそう。早く夢終われー。

 って願っても夢は夢。コントロールはできない。仕方ない、外の景色でも見て落ち着くか――――うわ、地球って青かったんだ。いやあれ、地球じゃないわ、どっちかというと緑だった。


 ああ、UFOだった。知らない場所だ、全然外見ても落ち着かないわ。なんか余計に気分悪くなってきた。乗り物酔いってやつか? ははは。


 「ヘイ、オメェ、サボッテンナ?」

 「テツダエヤボケナス!」


 なんとなく向こうから怒られてる気がする――――だったらなんだよ。サボって何が悪い、どうせ意味不明な夢の中、自由にやらせてもらうぜ。


 「アイツツイホウスッカ?」

 「ウチュウニホウリダスカナ」


 すっごい物騒なこと言ってる気がする。よし、夢の中でも、たとえ上司が宇宙人でも、俺は謙虚に従うだけ。なんて素晴らしい人格なんだ。


 俺は特に無表情な宇宙人らの顔色――灰色だけど――を窺い、ちょうど血の止まったベッドのほうへ歩いて行った。


 「キュウリョウハイクラー……は?」


 そこにいた人間、その安らかな顔に見覚えがあった。ていうか、今朝見たばっかだった、鏡で――――アレ? この人間、俺じゃね?


 ちょうど残った記憶、それは高校への通学途中に暴走するトラックからパンを咥えた少女を庇ったところ。


 そして今――――俺は宇宙人と共にUFOの中で手術中???


 「これは夢だ!!!」

 「ユメジャネエヨ、ハタラケヤ!」

 

 叫んだら宇宙人にビンタされました。ちゃんと痛いです。ハイ、夢じゃないです。終わったわ。いや、寝てる俺もなんか死んでそうだし、すでに終わってたわ。


 「オイ、ヤッパオマエツカエネエナ、モウイイワ! ツイホウスル!!」

 「え?」

 「ババーイ!!」


 バタン。ヒュー、ストン。UFOから落とし穴、細かすぎて伝わらないモノマネよりも、スッパリと俺は無重力空間に放り出されました。

 痛い!――――さらにUFOの追い打ち、俺はUFOにぶっとばされそのまま、どこかもわからない惑星へ。あ、ここ! さっき見た 地球みたいな星だ! わーい!! 


 万歳三唱、塩胡椒。オゾン突き抜け、雲をすり抜け、雨粒弾いて、見えた大陸。わー大きい。どうやって着地しよう? いやいや、これは夢だろ? ええ、夢だ。俺はそれを証明するだけ、このまま落ちちゃえー。


 ズボーン!! 落ちたのはそこそこ大きな湖。水爆よりも壮大な水飛沫を上げて、俺は――――静かに水面に浮かんだ。意識があるのは異常な星の環境か、それとも―――――沖に辿り着くと、険しい顔のでじーっと俺を。釣り人っぽい男たちが俺を囲っていた。


 「おめえ……何もんだ?」

 「人間です!!」

 「なわけがねえだでろ! 魔物め! 捕まえろー!!」


 迫真の説得もままならず、俺は男らから逃げた。銛を掲げてこっち追いかけてくる。

 なんなんだよ、俺、人間だろ? いや――水面に反射して映る光景はまるで怪盗ルパン――まぁ、その前にちゃんと肌の色が灰色の禿なんですけどね。あー。


 「ぜってぇ、逃がさねえ!」

 「うわっー!!」


 銛投げてきた。なんなの、人間。宇宙人に厳しくない? 厳しいって。やっぱ宇宙人はモテないって! それどころじゃないって!!


 「魔物おぉぉぶっころしゃぁー!!」

 「違う! 俺は魔物じゃない!!」


 見る限り転生物によくあるナーロッパな世界観、そんな建物がちょっと遠くに見える。けれど俺はなんの安心もない、だが弁明したい。


 「転生したら宇宙人になってただけなんだよ!!」


 とりあえず教会とか学院とかの偉い人、宇宙人でも能力開示のやつって適応されますか? あと、今から入れる保険ってありますか?

 そう懇願した転生初日、俺は漁業関係者から全力で逃げた。


――あとがき――

宇宙人でも成り上がったり、無双って出来るんですかね? 教えて、エリア51の元職員さん!

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